Fontan術後症候群―肝疾患(FALD)について

単心室等の先天性心疾患に対してFontan術を施行された後に,10~20年の経過で約50%がうっ血肝から肝障害を発症し,中には肝硬変から肝癌を発症する症例がある(Fontan-associated liver disease:FALD).肝硬変・肝がん非発症例の予後は良好であるが,一旦肝がんを発症すると1年生存率は約50%に低下する.FALD肝病変の進行には,うっ血肝による類洞への圧負荷と心臓手術後の慢性的低酸素状態が寄与している.FALD以外にも,Budd-Chiari症候群,重度右心不全も同様の機序で慢性うっ血が生じ,一部は肝硬変へ進展する.慢性うっ血肝の病態は多彩であり,肝線維化が急速に...

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Published in日本内科学会雑誌 Vol. 113; no. 1; pp. 120 - 126
Main Author 考藤, 達哉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内科学会 10.01.2024
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ISSN0021-5384
1883-2083
DOI10.2169/naika.113.120

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Summary:単心室等の先天性心疾患に対してFontan術を施行された後に,10~20年の経過で約50%がうっ血肝から肝障害を発症し,中には肝硬変から肝癌を発症する症例がある(Fontan-associated liver disease:FALD).肝硬変・肝がん非発症例の予後は良好であるが,一旦肝がんを発症すると1年生存率は約50%に低下する.FALD肝病変の進行には,うっ血肝による類洞への圧負荷と心臓手術後の慢性的低酸素状態が寄与している.FALD以外にも,Budd-Chiari症候群,重度右心不全も同様の機序で慢性うっ血が生じ,一部は肝硬変へ進展する.慢性うっ血肝の病態は多彩であり,肝線維化が急速に進行する症例と緩徐な症例の判別,肝発がん例と非発がん例の判別は,患者の生命予後に直結するが,その診断方法や治療法は確立されていない.本稿ではFALDの病態,診断の現状について概説し,FALDにおける肝線維化と発がん機序の解明を目指した筆者らのうっ血肝モデルマウスを用いた研究成果もあわせて紹介する.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.113.120