広範な門脈腫瘍塞栓を来たした膵尾部退形成性膵管癌(多形細胞型)の一例

症例は79歳,男性.右上肢の不全麻痺症状を主訴に当院救急搬送となる.血液データ上,炎症所見高値,肝胆道系酵素上昇,血小板減少及び凝固機能異常を認め,DICが示唆された.頭部MRIでは両側後頭葉を中心に亜急性期の多発脳梗塞所見を認め,急性期脳梗塞症の診断で入院となった.入院後に施行した腹部造影CTにて膵尾部に20mm大の造影効果の乏しい腫瘤を認め,脾動脈,脾静脈から門脈にかけて造影不良所見を認めた.膵尾部の病変は膵管癌と診断し,脾静脈から門脈の造影不良所見に関しては門脈系の血栓症を考えた.入院後肝不全の急速な進行があり,第18病日に死亡した.剖検を行ったところ,膵尾部から脾門部にかけてびまん性に...

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Published in膵臓 Vol. 26; no. 5; pp. 598 - 603
Main Authors 伊藤, 裕幸, 峯, 徹哉, 小川, 真実, 山下, 智裕, 梶原, 博, 中村, 直哉, 川口, 義明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本膵臓学会 2011
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ISSN0913-0071
1881-2805
DOI10.2958/suizo.26.598

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Summary:症例は79歳,男性.右上肢の不全麻痺症状を主訴に当院救急搬送となる.血液データ上,炎症所見高値,肝胆道系酵素上昇,血小板減少及び凝固機能異常を認め,DICが示唆された.頭部MRIでは両側後頭葉を中心に亜急性期の多発脳梗塞所見を認め,急性期脳梗塞症の診断で入院となった.入院後に施行した腹部造影CTにて膵尾部に20mm大の造影効果の乏しい腫瘤を認め,脾動脈,脾静脈から門脈にかけて造影不良所見を認めた.膵尾部の病変は膵管癌と診断し,脾静脈から門脈の造影不良所見に関しては門脈系の血栓症を考えた.入院後肝不全の急速な進行があり,第18病日に死亡した.剖検を行ったところ,膵尾部から脾門部にかけてびまん性に外方発育を示す腫瘍を認め,組織型は退形成性膵管癌(多形細胞型)であった.また周囲脈管にも浸潤傾向を示しており,脾静脈から肝内門脈,上下腸間膜静脈への広範囲に及ぶ連続性の腫瘍塞栓を呈していた.
ISSN:0913-0071
1881-2805
DOI:10.2958/suizo.26.598