軽症の原発性副甲状腺機能亢進症に対して外科治療は推奨されるか:患者と共有すべき臨床研究の成果

今日の原発性副甲状腺機能亢進症は,その多くが偶発的に発見され,血清カルシウム値の上昇が軽度で自覚症状を伴わない。海外の観察研究によれば患者の40%以上は外科治療を受けていない。「どのような症例に手術を勧めるべきか?」は40年以上にわたって問われ続けてきた重要な疑問である。国際ワークショップの推奨する適応要件は判断の一助となるが,これらを機械的に当てはめるだけでは対話は成立しない。「手術を受けるとどんな良いことがあるのか?」,「手術で起こりうる,好ましくない事象は何か?」,「手術を受けないと悪化するのか?」など,これらの疑問に答えるべく多くの臨床研究が先人によって積み重ねられてきた。それらの成果...

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Published in日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 Vol. 37; no. 2; pp. 97 - 104
Main Author 岡本, 高宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会 2020
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ISSN2186-9545
DOI10.11226/jaesjsts.37.2_97

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Summary:今日の原発性副甲状腺機能亢進症は,その多くが偶発的に発見され,血清カルシウム値の上昇が軽度で自覚症状を伴わない。海外の観察研究によれば患者の40%以上は外科治療を受けていない。「どのような症例に手術を勧めるべきか?」は40年以上にわたって問われ続けてきた重要な疑問である。国際ワークショップの推奨する適応要件は判断の一助となるが,これらを機械的に当てはめるだけでは対話は成立しない。「手術を受けるとどんな良いことがあるのか?」,「手術で起こりうる,好ましくない事象は何か?」,「手術を受けないと悪化するのか?」など,これらの疑問に答えるべく多くの臨床研究が先人によって積み重ねられてきた。それらの成果を学んで患者と共有できたとき,私たちは臨床医としての役割を果たしたことになる。さらに,未解決の疑問に挑戦することこそ,内分泌外科をサブスペシャルティとする専門医に課せられた責務である。
ISSN:2186-9545
DOI:10.11226/jaesjsts.37.2_97