閉経による血液生化学値の変化 久山町研究
目的: 閉経による血液生化学値の変化について, 断面調査による個体間変動と, 追跡調査による個体内変動について検討した. 対象と方法: 1)断面調査の対象は, 昭和48・49年度の検診を受診した満40歳から54歳の久山町在住の女性566例である. 対象者を5歳毎の年齢階級に分け, 各年齢階級内で閉経の有無により, 非閉経群と閉経群に層別した. 血液生化学値21項目の夫々について, Hoffmann 法をもちい基準値を設定した. この範囲に入る者について, 平均値を二群間で比較した. 2) 追跡調査では断面調査の対象者のうち昭和53年度の検診を受診した472例を対象とした. この対象者を5年間の...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 23; no. 1; pp. 50 - 58 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
01.01.1986
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Subjects | |
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.23.50 |
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Summary: | 目的: 閉経による血液生化学値の変化について, 断面調査による個体間変動と, 追跡調査による個体内変動について検討した. 対象と方法: 1)断面調査の対象は, 昭和48・49年度の検診を受診した満40歳から54歳の久山町在住の女性566例である. 対象者を5歳毎の年齢階級に分け, 各年齢階級内で閉経の有無により, 非閉経群と閉経群に層別した. 血液生化学値21項目の夫々について, Hoffmann 法をもちい基準値を設定した. この範囲に入る者について, 平均値を二群間で比較した. 2) 追跡調査では断面調査の対象者のうち昭和53年度の検診を受診した472例を対象とした. この対象者を5年間の追跡期間に月経の継続した閉経前群 (166例), この間に閉経を迎えた閉経群 (131例), すでに閉経を迎えていた閉経後群 (175例) に分けた. 断面調査の閉経群で有意に高値を示した7項目について, 昭和48・49年度から昭和53年度にいたる5年間の変化を検討した. 昭和53年度の値についても, 同様に Hoffmann 法を用い基準値を設定し, この範囲に入る者のみを対象とした. 全年齢階級の検討では共分散分析で年齢を補正した. 結果:1) 断面調査では次の7項目が閉経群で有意に高値を示した. すなわち, 全年齢階級では, ALP (6.70 vs 7.83u), LAP (128.25 vs 137.42u), CHOL (182.93 vs 190.43mg/dl), BUN (13.54 vs 14.63mg/dl), SUA (3.97 vs 4.20mg/dl), Na (142.20 vs 143.42mEq/l), Ca (9.59 vs 9.67mg/dl) であった. 5歳毎の年齢階級でも各年齢階級で閉経群の方が高値であった. 2) 追跡調査では, ALPは閉経前群と閉経群で有意の上昇を示したが, 他の6項目は閉経後でのみ有意の上昇がみられた. 三群間の比較では, BUNとNaを除き, 閉経群の上昇は他の二群に比べ有意に高かった. 以上の結果から, 閉経の有無によるこれら7項目の血液生化学値は観察期間内に閉経を迎えた群で, より著明に上昇すると考えられた. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.23.50 |