老人ホーム居住者の糖尿病検診のためのHbA1c測定 生理的加齢と検診法について

HbA1c値測定は糖尿病のコントロール及び診断の1つの手段として利用されている. 今回養護老人ホームの検診にHbA1cを加え, 老年者の正常値, 加齢による変動を検討した. また老年者の糖尿病検診の方法についても検討を加えた. 対象は養護老人ホームの施設老人1,114名で, 968名でHbA1c値及びBMIを測定した. HbA1c値は3.7~12.5%に分布し, 平均と標準偏差は5.03±0.61%であり, 性差は認めなかった. HbA1c値は920名 (95%) が6.0%以下であった. 年齢とHbA1c値との間には相関は認めなかったが, 年齢層別に60歳代から90歳代に分けると, 年齢層が...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 27; no. 1; pp. 40 - 44
Main Authors 濱本, 真, 黒木, 副武, 宮崎, 徳蔵, 井上, 剛輔, 吉井, 博, 津島, 隆也, 中野, 忠澄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 01.01.1990
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.27.40

Cover

More Information
Summary:HbA1c値測定は糖尿病のコントロール及び診断の1つの手段として利用されている. 今回養護老人ホームの検診にHbA1cを加え, 老年者の正常値, 加齢による変動を検討した. また老年者の糖尿病検診の方法についても検討を加えた. 対象は養護老人ホームの施設老人1,114名で, 968名でHbA1c値及びBMIを測定した. HbA1c値は3.7~12.5%に分布し, 平均と標準偏差は5.03±0.61%であり, 性差は認めなかった. HbA1c値は920名 (95%) が6.0%以下であった. 年齢とHbA1c値との間には相関は認めなかったが, 年齢層別に60歳代から90歳代に分けると, 年齢層が上昇するに従いHbA1c値は僅かに上昇し, 90歳代でHbA1c値は5.51±1.06%であり, その他の年齢層との間で有意差を認めた. Body Mass Index (BMI) は逆に年代が上昇するに従って, 僅かに減少し, 90歳代とその他の年齢層との間で差を認めた. これら2つの結果より, 90歳代ではそれ以下の年齢層と比較して, 代謝的に相違がある可能性が示唆された. 老年者の検診では老人の特殊性の問題がある. 75g OGTTは軽度の痴呆や視聴覚障害の存在のため信頼性に疑問があり, FBS測定は空腹による身体への負担等により適切とは思われない. 一方, HbA1c値測定は食事による影響を受けず, また, 痴呆や身体的障害にも影響されず, 一般生化学と同時に採血でき老人への負担は少ない. これらの老年者の検診の問題点を考慮し, 感度の点でもFBSと変わらないことより, HbA1c値測定はFBSや75g OGTTに較べ, 負担は少なく, 老年者の糖尿病スクリーニングとして実用的と考えられる.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.27.40