急性歯性感染症発症における宿主側の要因に関する研究 患者背景因子および徹夜後血清による好中球遊走能の変化について
感染症の発症には菌の毒力と宿主の抵抗性の両因子が関与することは論を待たないが, 従来, 急性歯性感染症については主として細菌側の因子について検討される事が多く, 宿主側の因子が顧みられることは少なかった. われわれは宿主側の因子, 特に発症前の成立要因について臨床統計的に検討を加えた後に, 疲労時の血清が好中球遊走能に与える影響について検討を行い, 以下の結果を得た. 1. 急性歯性感染症患者および慢性歯牙歯周疾患を有していながら急性炎症症状を呈さない対照群各50名に対し, 発症の背景に関する調査を行ったところ, 基礎疾患あるいは合併疾患が存在しない宿主においても弱毒菌による急性感染症が成立し...
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Published in | 感染症学雑誌 Vol. 65; no. 1; pp. 47 - 53 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本感染症学会
01.01.1991
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ISSN | 0387-5911 1884-569X |
DOI | 10.11150/kansenshogakuzasshi1970.65.47 |
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Summary: | 感染症の発症には菌の毒力と宿主の抵抗性の両因子が関与することは論を待たないが, 従来, 急性歯性感染症については主として細菌側の因子について検討される事が多く, 宿主側の因子が顧みられることは少なかった. われわれは宿主側の因子, 特に発症前の成立要因について臨床統計的に検討を加えた後に, 疲労時の血清が好中球遊走能に与える影響について検討を行い, 以下の結果を得た. 1. 急性歯性感染症患者および慢性歯牙歯周疾患を有していながら急性炎症症状を呈さない対照群各50名に対し, 発症の背景に関する調査を行ったところ, 基礎疾患あるいは合併疾患が存在しない宿主においても弱毒菌による急性感染症が成立し, この背景には多忙や睡眠時間減少などがあることが明らかとなった. 2. 健常成人男性6名を対象として徹夜後の疲労血清が好中球遊走能に与える影響について, Boyden-chamber変法を用いて検討したところ, 徹夜直後の血清を加えた時の遊走細胞数が有意に低下することが認められた. 3. これらの結果より, 急性歯性感染症発症前の疲労状態が好中球の遊走能低下を通じて発症に関与している可能性が示唆されたが, 影響を与えている血清中の因子, また他の防御機能との関連について今後, さらに検討する必要があると考えられた. |
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ISSN: | 0387-5911 1884-569X |
DOI: | 10.11150/kansenshogakuzasshi1970.65.47 |