地域高齢者における大腿骨頸部骨折予防装具の装着率に関する基礎的研究
我が国の高齢化社会を背景として急増している大腿骨頸部骨折を予防する目的で, 最近欧米で開発され利用されている大腿骨頸部骨折予防装具について, その装着率や脱落理由などの基本的研究を行なった. 対象となったのは秋田県山間部農村に住む在宅高齢者 (70歳以上) で, 過去1年間に転倒した経験を有する女性20名である. この対象者にデンマーク製の硬質ポリプロピレン製パットの入った装具 (9名) とフィンランド製の軟質強化ゴム製パットの入った装具 (11名) の2種類を用いて, 平成9年9月から平成10年3月まで6カ月間追跡調査を行なった. 結果として, 硬質装具は第1週で1/3が脱落し, 6カ月後で...
Saved in:
Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 36; no. 1; pp. 40 - 44 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
25.01.1999
|
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.36.40 |
Cover
Summary: | 我が国の高齢化社会を背景として急増している大腿骨頸部骨折を予防する目的で, 最近欧米で開発され利用されている大腿骨頸部骨折予防装具について, その装着率や脱落理由などの基本的研究を行なった. 対象となったのは秋田県山間部農村に住む在宅高齢者 (70歳以上) で, 過去1年間に転倒した経験を有する女性20名である. この対象者にデンマーク製の硬質ポリプロピレン製パットの入った装具 (9名) とフィンランド製の軟質強化ゴム製パットの入った装具 (11名) の2種類を用いて, 平成9年9月から平成10年3月まで6カ月間追跡調査を行なった. 結果として, 硬質装具は第1週で1/3が脱落し, 6カ月後ではその装着率は44%であった. 一方, 軟質装具の脱落率は比較的低く, 最終的に73%が装着を維持していた. 脱落理由として, 初期では「排尿時に間に合わない」が多く, 後期では寒い時の「下着の重ね着時に窮屈」などであった. 装着継続群と脱落群との差としては年齢や握力などがあげられたが, 20名という少ない人数では明確な差異は抽出しえなかった. 今回の研究から, 予防装具は最初に充分な説明と動機付けの得られることが重要であり, その後のより細かな指導と動機を維持するならば (硬質, 軟質を問わず) 比較的高い装着率を維持することが可能であり, 高齢者の転倒による大腿骨頸部骨折を予防することが充分可能であると考えられた. |
---|---|
ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.36.40 |