老年女性における知的機能へのカルシウム関連因子の関与について

老年期痴呆へのカルシウム関連因子の関与を検討した. 長谷川式簡易痴呆評価スケールの得点により, 老年女性60例を非痴呆群 (得点22.0~32.5点, 18例) と痴呆群 (得点0~21.5点, 42例)に分類した. さらに痴呆群は Rosen らの虚血スコアにより, 負のスコアを示す Alzheimer 型痴呆群 (22例) と正のスコアを示す脳血管性痴呆群 (20例) に分類した. これら3群間には, 平均年齢, 血清クレアチニン値に有意差を認めなかった. Alzheimer 型痴呆群では, 非痴呆群に比し, 血清Ca値の有意 (p<0.01) の低下, 尿中クレアチニン補正カルシウ...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 28; no. 1; pp. 34 - 39
Main Authors 荻原, 俊男, 今中, 俊爾, 山本, 秀樹, 宮, 敬子, 宮下, 善行, 井上, 卓夫, 廣谷, 淳, 北野, 昇一, 福尾, 恵介, 白石, 恒人, 森本, 茂人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 01.01.1991
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.28.34

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Summary:老年期痴呆へのカルシウム関連因子の関与を検討した. 長谷川式簡易痴呆評価スケールの得点により, 老年女性60例を非痴呆群 (得点22.0~32.5点, 18例) と痴呆群 (得点0~21.5点, 42例)に分類した. さらに痴呆群は Rosen らの虚血スコアにより, 負のスコアを示す Alzheimer 型痴呆群 (22例) と正のスコアを示す脳血管性痴呆群 (20例) に分類した. これら3群間には, 平均年齢, 血清クレアチニン値に有意差を認めなかった. Alzheimer 型痴呆群では, 非痴呆群に比し, 血清Ca値の有意 (p<0.01) の低下, 尿中クレアチニン補正カルシウム値の有意 (p<0.01) の上昇, 血清C端副甲状腺ホルモン値の有意 (p<0.05) の上昇を認めた. また Alzheimer 型と痴呆群, 非痴呆群とを合わせた群において, 長谷川式簡易痴呆評価スケールの得点と, 尿中クレアチニン補正カルシウム値とは有意の負の相関(r=-0.38, p<0.05) を, 血清C端副甲状腺ホルモン値とは有意 (r=-0.49, p<0.05) の負の相関を, さらに血清1,25-ジヒドロキシビタミンDとは有意 (r=0.31, p<0.05) の正の相関を認めた. 一方, 脳血管性痴呆群では, 非痴呆群と比較して, 上記の有意差を認めなかったが, 脳血管性痴呆群と非痴呆群を合わせた群において, 長谷川式簡易痴呆評価スケールの得点と血清カルシトニン値とは有意 (r=0.40, p<0.05) の正の相関を認めた. これらの結果から Alzheimer 型痴呆と脳血管性痴呆にカルシウム代謝異常が存在し, Alzheimer 型痴呆の病態に血清カルシウム低値, 血中副甲状腺ホルモン高値, 血中1,25-ジヒドロキシビタミンD低値, 尿中カルシウム排泄増加が関与している可能性があり, 脳血管性痴呆の病態に血中カルシトニン低値が関与している可能性が考えられた. つまり, 補正血清カルシウム値が, 非痴呆群, Alzheimer 型痴呆群, 脳血管性痴呆群の3群間に有意差がないにもかかわらず, これらのカルシウム調節因子の変化を認めたことより痴呆には特異なカルシウム代謝異常の存在する可能性があることが示唆された.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.28.34