鏡検、培養をせず、膿皮症もしくは皮膚腫瘍と誤診されていた Microsporum gypseum によるケルスス禿瘡の 1 例

7 歳,男児.都内在住,既往に軽度のアトピー性皮膚炎あり.猫を飼っている.数週間前より頭頂部に紅斑が出現,急速に拡大,隆起傾向を示してきた.複数の医院にて臨床症状を見たのみで,膿皮症もしくは二次感染を伴った皮膚腫瘍と診断され抗生剤が投与,2 件目の医院ではいきなり皮膚生検が行われていた.3 件目の医院を受診し初めてケルスス禿瘡が疑われ,当科紹介受診した.初診時,頭頂部に 45×45×5 mm のドーム状隆起する腫瘤性病変を認め,毛孔一致性に膿疱,辺縁部に痂皮の付着を伴っていた.同部の毛髪は脱落し,後頭,頚部ではリンパ節を複数個触知した.容易に抜ける毛の KOH 直接鏡検で毛内に真菌の寄生形態を...

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Published in日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 p. 149
Main Authors 塩原, 哲夫, 福田, 知雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医真菌学会 2005
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ISSN0916-4804
DOI10.11534/jsmm.49.0.149.0

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Summary:7 歳,男児.都内在住,既往に軽度のアトピー性皮膚炎あり.猫を飼っている.数週間前より頭頂部に紅斑が出現,急速に拡大,隆起傾向を示してきた.複数の医院にて臨床症状を見たのみで,膿皮症もしくは二次感染を伴った皮膚腫瘍と診断され抗生剤が投与,2 件目の医院ではいきなり皮膚生検が行われていた.3 件目の医院を受診し初めてケルスス禿瘡が疑われ,当科紹介受診した.初診時,頭頂部に 45×45×5 mm のドーム状隆起する腫瘤性病変を認め,毛孔一致性に膿疱,辺縁部に痂皮の付着を伴っていた.同部の毛髪は脱落し,後頭,頚部ではリンパ節を複数個触知した.容易に抜ける毛の KOH 直接鏡検で毛内に真菌の寄生形態を確認,真菌培養では発育の早い黄白色粉状コロニーの形成がみられた.スライドカルチャーにて特有の大分生子を多数確認し原因菌を Microsporum gypseum と同定した.治療はイトラコナゾール 50 mg/日が著効,約 2 ヵ月の経過で治癒した.その後再発は認めていない.Microsporum gypseum は土壌好性菌で,感染は農業従事者に多いが,犬猫などのペットからの感染もみられる.自験例ではペットの毛が抜けていたとの情報があること,時々猫を枕にしていた生活歴より猫からの感染が強く疑われる.自験例は当科受診時まで,一度も真菌鏡検,培養の基本検査がなされなかったことに問題がある.
Bibliography:P-109
ISSN:0916-4804
DOI:10.11534/jsmm.49.0.149.0