GVHDの基礎病態と治療標的

造血細胞移植後の長期的なGVHD制御は,多様化が進む現代の移植医療が直面する命題のひとつである。この10年間,GVHDに関する診断と評価の客観的基準策定と,発症への生物学的経路の理解における進歩を背景に,新規薬剤の開発が着実に進捗している。これまでの移植では,カルシニューリン阻害薬とステロイドがGVHD管理の中心であったが,近年では,①急性期ドナーT細胞増殖を必要十分なサイズに限定するT細胞除去の適用とともに,②発症したGVHDにはステロイドへの曝露を最小化しながら患者個別的な標的治療を目指す方向性が模索されている。今後,個々の患者における病態経路を同定するバイオマーカーの開発と臨床実装は,移...

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Published in日本造血・免疫細胞療法学会雑誌 Vol. 14; no. 3; pp. 114 - 120
Main Author 松岡 賢市
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本造血・免疫細胞療法学会 2025
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ISSN2436-455X
DOI10.7889/tct-25-004

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Summary:造血細胞移植後の長期的なGVHD制御は,多様化が進む現代の移植医療が直面する命題のひとつである。この10年間,GVHDに関する診断と評価の客観的基準策定と,発症への生物学的経路の理解における進歩を背景に,新規薬剤の開発が着実に進捗している。これまでの移植では,カルシニューリン阻害薬とステロイドがGVHD管理の中心であったが,近年では,①急性期ドナーT細胞増殖を必要十分なサイズに限定するT細胞除去の適用とともに,②発症したGVHDにはステロイドへの曝露を最小化しながら患者個別的な標的治療を目指す方向性が模索されている。今後,個々の患者における病態経路を同定するバイオマーカーの開発と臨床実装は,移植後免疫管理を適切に実施する基盤となろう。客観的情報に基づくアプローチが確立できれば,移植免疫制御においても個別化医療の流れが大きく加速し,より安全で効果的な移植後マネジメントが実現される。
ISSN:2436-455X
DOI:10.7889/tct-25-004