高度栄養障害と血液凝固異常をきたした肝血管腫(長径23cm)の1例

症例は40歳の女性で,1カ月前から増悪する腹部膨満と右側腹部痛および経口摂取不良のため,近医を受診した.腹部超音波検査で肝右葉を占める巨大肝腫瘍を指摘され,当院へ紹介となった.長期間の経口摂取不良のため重度低栄養状態であり,血液検査にて高度の貧血,フィブリノーゲン値低下,FDPとDダイマー値の著明な上昇を認めた.腹部造影CTと造影MRIから,腫瘍内出血を伴う23×15cmの巨大肝海綿状血管腫と診断した.腫瘍随伴性の栄養障害と凝固機能異常をきたしており,手術適応と判断した.術中の出血コントロール目的に腫瘍の支配血管である右肝動脈に対する塞栓術を術前に施行し,肝右3区域切除術を施行した.術後凝固異...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 83; no. 11; pp. 1993 - 2000
Main Authors 松橋, 延壽, 藤林, 勢世, 深田, 真宏, 東, 敏弥, 村瀬, 勝俊, 髙橋, 孝夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2022
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.83.1993

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Summary:症例は40歳の女性で,1カ月前から増悪する腹部膨満と右側腹部痛および経口摂取不良のため,近医を受診した.腹部超音波検査で肝右葉を占める巨大肝腫瘍を指摘され,当院へ紹介となった.長期間の経口摂取不良のため重度低栄養状態であり,血液検査にて高度の貧血,フィブリノーゲン値低下,FDPとDダイマー値の著明な上昇を認めた.腹部造影CTと造影MRIから,腫瘍内出血を伴う23×15cmの巨大肝海綿状血管腫と診断した.腫瘍随伴性の栄養障害と凝固機能異常をきたしており,手術適応と判断した.術中の出血コントロール目的に腫瘍の支配血管である右肝動脈に対する塞栓術を術前に施行し,肝右3区域切除術を施行した.術後凝固異常の著明な改善を認め,経口摂取も良好となり,経過良好にて術後11日目に退院となった.術後12カ月現在,血液検査の正常化および栄養状態の改善を認め,無再発経過観察中である.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.83.1993