良性縦隔胞の癒着により収縮性心膜炎をきたし興味深い経過をたどった1例

悪性疾患の播種による収縮性心膜炎の報告に比べて, 良性腫瘍との合併例の報告は少ない. 今回, われわれは良性縦隔胞の癒着により収縮性心膜炎をきたした症例を経験したので報告する. 症例は64歳, 女性. 2002年1月に下腿と顔面の浮腫を主訴に当科を受診. 胸部CTや心エコーにて, 右室前面と左室後面に局在したフリースペースを認め, 心膜液(心液) と考えられたが, 浮腫との関連は不明であった. 2006年5月に肝機能障害のため初めて造影CTが施行され, これまで局在する心膜液と思われていたものは前縦隔腫瘍であり, 同腫瘍によって右室, 右房が圧排されていると診断された. 呼吸器外科で腫瘍摘出術...

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Published in心臓 Vol. 43; no. 3; pp. 377 - 384
Main Authors 貴田岡, 享, 船井, 哲雄, 加藤, 淳一, 長谷部, 直幸, 小川, 裕二, 塩越, 隆広, 大場, 淳一, 木島, 基, 宮武, 司, 太田, 貴文, 青木, 秀俊
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2011
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.43.377

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Summary:悪性疾患の播種による収縮性心膜炎の報告に比べて, 良性腫瘍との合併例の報告は少ない. 今回, われわれは良性縦隔胞の癒着により収縮性心膜炎をきたした症例を経験したので報告する. 症例は64歳, 女性. 2002年1月に下腿と顔面の浮腫を主訴に当科を受診. 胸部CTや心エコーにて, 右室前面と左室後面に局在したフリースペースを認め, 心膜液(心液) と考えられたが, 浮腫との関連は不明であった. 2006年5月に肝機能障害のため初めて造影CTが施行され, これまで局在する心膜液と思われていたものは前縦隔腫瘍であり, 同腫瘍によって右室, 右房が圧排されていると診断された. 呼吸器外科で腫瘍摘出術が施行され, 腫瘍は良性胞であったが, 心外膜との癒着が強く, 離が困難であったため腫瘍が残存した. 術後の心エコーにて両心室の拡張制限があり, 収縮性心膜炎が疑われ当科へ転科. 心臓カテーテル検査の結果, 右心室内圧は上昇し, 圧波形はdip and plateau patternを示していた. 残存腫瘍による圧排に加え, 心外膜への癒着を原因とした収縮性心膜炎を合併していると診断し, 近医心臓外科にて心膜離術を施行した. 診断・治療の過程に反省点は多いが, 心臓近傍の良性腫瘍が長い経過で収縮性心膜炎にいたる経過を観察することができた. 悪性腫瘍だけではなく, 良性腫瘍も癒着により収縮性心膜炎を起こし得ることに留意が必要である.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.43.377