新規イミダゾール系抗真菌薬ルリコナゾールの白癬菌プロテアーゼ産生ならびに角層内侵入に及ぼす影響

【はじめに】プロテアーゼは白癬菌が皮膚角層バリアを破壊して感染を成立する上で重要な役割を果すと考えられている.我々はルリコナゾール (LLCZ) の抗白癬菌作用メカニズム解明を目的として,(1) 皮膚角質を含む培地での Trichophyton mentagrophytes (T.m ) の酸性プロテアーゼ産生ならびに (2) T.m の in vitro 角層内侵入,に及ぼす LLCZ の影響を調べ,塩酸テルビナフィン (TBF) と比較した.【材料および方法】(1) モルモット足角層より調製した粉末を基質とし,薬剤を添加した 0.1 M PBS (pH 5.5) 中で T.m を 3-5...

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Published in日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 p. 127
Main Authors 坪井, 良治, 古賀, 裕康, 山口, 英世, 辻, 有里, 井上, 和美, 南條, 育子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医真菌学会 2005
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ISSN0916-4804
DOI10.11534/jsmm.49.0.127.0

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Summary:【はじめに】プロテアーゼは白癬菌が皮膚角層バリアを破壊して感染を成立する上で重要な役割を果すと考えられている.我々はルリコナゾール (LLCZ) の抗白癬菌作用メカニズム解明を目的として,(1) 皮膚角質を含む培地での Trichophyton mentagrophytes (T.m ) の酸性プロテアーゼ産生ならびに (2) T.m の in vitro 角層内侵入,に及ぼす LLCZ の影響を調べ,塩酸テルビナフィン (TBF) と比較した.【材料および方法】(1) モルモット足角層より調製した粉末を基質とし,薬剤を添加した 0.1 M PBS (pH 5.5) 中で T.m を 3-5 日間培養した.培養液中のプロテアーゼ活性はカゼイン蛍光基質を用いた蛍光測定法で測定した.菌量は細胞壁溶解酵素により遊離させた N-アセチルグルコサミン量に基づき測定した.(2) ヒト皮膚再構築モデル TESTSKIN® (東洋紡)の角層表面に T.m 分生子を接種後,薬剤を添加した培養液で 48 時間培養し,分生子の発芽状態および菌の角層内への侵入度を病理組織学的に調べた.【結果および考察】(1) LLCZ のプロテアーゼ産生に対する影響は培養3日後で顕著にみられ,0.01 ng/mL の低濃度でも阻害が認められた.一方,菌の発育を阻止した濃度は 0.1 ng/mL 以上であり,菌糸発育に影響の見られない濃度域でプロテアーゼ産生が阻害された.TBF では,産生阻害濃度および発育阻止濃度はいずれも 1 ng/mL 以上であり,両者間に差はみられなかった.(2) LLCZ については,分生子発芽阻止濃度が 0.1 μg/mL 以上であったのに対し,菌の角層内への侵入は 0.01 μg/mL でも阻止され,分生子の発芽をゆるす濃度で角層内への侵入が阻止された.TBF では,発芽および角層内侵入を阻止する濃度はいずれも 1 μg/mL 以上であり,両者間に差はみられなかった.以上より,LLCZ は sub MIC 域でも白癬菌のプロテアーゼ産生を阻害し,菌糸の角層内侵入を阻止すると推察された.この作用は LLCZ の優れた白癬治療効果の要因の一つと考えられる.
Bibliography:P-87
ISSN:0916-4804
DOI:10.11534/jsmm.49.0.127.0