重症心身障害者の母親が移行期医療としての転科を拒む理由 ひとりの母親のライフストーリーに着目して

本研究の目的は、小児診療科から転科を促された重症心身障害者の母親が、その促しを拒む理由を明らかにすることである。研究対象者は、転科を拒んだ経験のある東海地方在住の重症心身障害者の母親1名である。研究方法は、子どもの転科に関する経験について2回のインタビュー調査を実施した。テクストにある小さな出来事を把握し、個々の出来事を結ぶ文脈について分析した。この文脈が転科を拒む主な理由である。分析の結果、転科を拒む理由は次の2つである。1.必要な医療を受け続けたい希望 : 転科後、重症心身障害者の体調が悪化した際に、小児診療科では受け入れてもらえないため、必要な医療を受け続けたいという希望であった。2.温...

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Published in日本小児看護学会誌 Vol. 34; pp. 120 - 127
Main Author 山本 美智代
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本小児看護学会 2025
日本小児看護学会
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ISSN1344-9923
2423-8457
DOI10.20625/jschn.34_120

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Summary:本研究の目的は、小児診療科から転科を促された重症心身障害者の母親が、その促しを拒む理由を明らかにすることである。研究対象者は、転科を拒んだ経験のある東海地方在住の重症心身障害者の母親1名である。研究方法は、子どもの転科に関する経験について2回のインタビュー調査を実施した。テクストにある小さな出来事を把握し、個々の出来事を結ぶ文脈について分析した。この文脈が転科を拒む主な理由である。分析の結果、転科を拒む理由は次の2つである。1.必要な医療を受け続けたい希望 : 転科後、重症心身障害者の体調が悪化した際に、小児診療科では受け入れてもらえないため、必要な医療を受け続けたいという希望であった。2.温度差のある命の重み : 転科は母親にとって命の問題であったが、医療従事者が同じように感じているとは思えない相違があった。考察では、小児診療科と家族との間で話し合いの場を設けることが不可欠と示唆された。
ISSN:1344-9923
2423-8457
DOI:10.20625/jschn.34_120