急性扁桃炎におけるHSV・EBV感染の検索 光学および電子顕微鏡による病理組織学的検討
成人の急性扁桃炎におけるHSV・EBV感染の関係を検索するため, 細菌検査, 血液検査, 口蓋扁桃生検組織検査の光学顕微鏡による組織形態変化とHSV抗原, EBV感染細胞の検索, さらに電子顕微鏡による観察を行い, HSV・EBVによる急性扁桃炎の臨床所見と検査結果の特徴について検討を加えた. 対象は1997年8月から2000年3月までに東京女子医大第二病院耳鼻咽喉科を受診した急性扁桃炎の重症例42例である. 男性は24例 (平均年齢30.8歳), 女性は18例 (平均年齢28.3歳) で, 年齢は16~76歳まで (平均29.8歳) だった. 結果として, 血清ウイルス抗体価の変動から, 4...
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Published in | 日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 104; no. 11; pp. 1093 - 1102_2 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | English Japanese |
Published |
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
2001
日本耳鼻咽喉科学会 |
Subjects | |
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ISSN | 0030-6622 1883-0854 |
DOI | 10.3950/jibiinkoka.104.1093 |
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Summary: | 成人の急性扁桃炎におけるHSV・EBV感染の関係を検索するため, 細菌検査, 血液検査, 口蓋扁桃生検組織検査の光学顕微鏡による組織形態変化とHSV抗原, EBV感染細胞の検索, さらに電子顕微鏡による観察を行い, HSV・EBVによる急性扁桃炎の臨床所見と検査結果の特徴について検討を加えた. 対象は1997年8月から2000年3月までに東京女子医大第二病院耳鼻咽喉科を受診した急性扁桃炎の重症例42例である. 男性は24例 (平均年齢30.8歳), 女性は18例 (平均年齢28.3歳) で, 年齢は16~76歳まで (平均29.8歳) だった. 結果として, 血清ウイルス抗体価の変動から, 4例 (9.5%) でHSV初感染急性扁桃炎, 5例 (11.9%) でEBV初感染急性扁桃炎を認めた. HSV初感染急性扁桃炎の特徴的所見として, 口内炎・皮疹, 異形リンパ球, 肝機能障害の出現, EBV初感染急性扁桃炎の特徴的所見として, 軟口蓋点状出血, リンパ球の上昇, 異形リンパ球, 肝機能障害の出現が明確になった. HSV初感染急性扁桃炎の発症平均年齢は28.0歳であり, 小児期以外に成人でもHSV初感染によって急性扁桃炎が引き起こされることが判明した. 口蓋扁桃生検組織でHSV初感染急性扁桃炎例はHSV抗原は2例 (50%), EBV初感染急性扁桃炎例ではEBER陽性細胞が5例 (100%) 検出され, 特殊染色が有用であった. 電子顕微鏡では, 急性扁桃炎の重症例は上皮細胞障害に始まり好中球や単核球, 形質細胞が多数上皮層に侵入してくる疾患群であることが明確になった. またHSVやEBV感染例と他の症例については障害の強弱はあるものの同様な形態的変化であった. これらのことより臨床所見の詳細な観察に加え特殊染色を含めた病理検査を積極的に行うことで, 日常診療においてHSV・EBV感染を明確にし, 早期診断・治療を可能にすることが示唆される. |
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ISSN: | 0030-6622 1883-0854 |
DOI: | 10.3950/jibiinkoka.104.1093 |