一酸化窒素合成酵素と心不全― 遺伝子改変マウスからの教訓
一酸化窒素(NO)合成酵素(NOS)には,神経型,誘導型,内皮型の3種類のNOSアイソフォームが存在する.ヒト心臓には,すべてのNOSsが発現している.従来,心不全におけるNOSsの役割が,NOS阻害薬を用いて研究されてきた.さらに,近年では,遺伝子改変動物が実験に使用されるようになり,ヒト心不全におけるNOSsの役割の理解に重要な示唆を与えている.我々は,NOSアイソフォームを欠損させたNOS遺伝子改変マウスを用いて,その心臓の構造と心機能を評価した.その結果,3種類のNOSアイソフォームを欠損させたtriple NOS欠損マウスにだけ,有意な求心性肥大と拡張障害があり,その病態は,ヒトの拡...
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Published in | Journal of UOEH Vol. 35; no. 2; pp. 147 - 158 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | English Japanese |
Published |
学校法人 産業医科大学
2013
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Subjects | |
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ISSN | 0387-821X 2187-2864 |
DOI | 10.7888/juoeh.35.147 |
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Summary: | 一酸化窒素(NO)合成酵素(NOS)には,神経型,誘導型,内皮型の3種類のNOSアイソフォームが存在する.ヒト心臓には,すべてのNOSsが発現している.従来,心不全におけるNOSsの役割が,NOS阻害薬を用いて研究されてきた.さらに,近年では,遺伝子改変動物が実験に使用されるようになり,ヒト心不全におけるNOSsの役割の理解に重要な示唆を与えている.我々は,NOSアイソフォームを欠損させたNOS遺伝子改変マウスを用いて,その心臓の構造と心機能を評価した.その結果,3種類のNOSアイソフォームを欠損させたtriple NOS欠損マウスにだけ,有意な求心性肥大と拡張障害があり,その病態は,ヒトの拡張期心不全に酷似していることを明らかにした.また,AT1受容体拮抗薬を負荷した結果,それらの病態が抑制されたことから,これらの機序には,AT1受容体を介していることが示唆された.triple NOS欠損マウスを用いた研究は,ヒト心不全におけるNOSsの役割の解明に,大きく寄与したものと言える. |
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ISSN: | 0387-821X 2187-2864 |
DOI: | 10.7888/juoeh.35.147 |