我が国におけるAcute-On-Chronic Liver Failure(ACLF)の診断基準(案)

厚生労働省「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班の劇症肝炎分科会は,acute-on-chronic liver failure(ACLF)の診断基準を確立する目的で予備調査を実施し,わが国の症例にはアジア太平洋肝臓学会(APASL)の診断基準が適合しているが,その重症度分類にはヨーロッパ肝臓学会の慢性肝不全(EASL-Clif)コンソーシアムの基準が有用であることを明らかにした.そこで,わが国の診断基準はAPASL基準に準拠して,「Child-Pughスコアが5~9点の代償性ないし非代償性肝硬変に,アルコール多飲,感染症,消化管出血,原疾患増悪などの増悪要因が加わって,28日以内に高度の...

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Published in肝臓 Vol. 59; no. 3; pp. 155 - 161
Main Authors 井上, 和明, 横須賀, 収, 持田, 智, 中山, 伸朗, 玄田, 拓哉, 寺井, 崇二, 清水, 雅仁, 井戸, 章雄, 坂井田, 功, 滝川, 一, 滝川, 康裕
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 2018
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.59.155

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Summary:厚生労働省「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班の劇症肝炎分科会は,acute-on-chronic liver failure(ACLF)の診断基準を確立する目的で予備調査を実施し,わが国の症例にはアジア太平洋肝臓学会(APASL)の診断基準が適合しているが,その重症度分類にはヨーロッパ肝臓学会の慢性肝不全(EASL-Clif)コンソーシアムの基準が有用であることを明らかにした.そこで,わが国の診断基準はAPASL基準に準拠して,「Child-Pughスコアが5~9点の代償性ないし非代償性肝硬変に,アルコール多飲,感染症,消化管出血,原疾患増悪などの増悪要因が加わって,28日以内に高度の肝機能異常に基づいて,プロトロンビン時間INRが1.5以上ないし同活性が40%以下で,総ビリルビン濃度が5.0 mg/dL以上を示す肝障害」と定義することになった.APASL基準とは異なって,非肝硬変症例は対象から除外し,一方,増悪要因に消化管出血を加えている.また,その重症度はEASL-Clifコンソーシアム基準に準拠して,肝,腎,脳,血液凝固系,循環器,呼吸器の障害の程度に応じて4段階に分類することとなった.同診断基準の有用性は,今後,全国規模で前向き調査を実施し,評価する予定である.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.59.155