手部軟部組織欠損に対する手術用手袋と局所陰圧閉鎖療法を組み合わせた治療法

陰圧閉鎖療法negative pressure wound therapy(NPWT)は皮膚欠損創の治療に有効性が確立されている.しかし,エアリークが容易に生じるため手外科分野において応用が難しい.今回手術用手袋を併用しNPWTを手部に用いて治療を行った2症例を経験したので報告する.症例1:37歳男性,人を殴って右手背部を受傷し,受傷より3日目に創部の疼痛・腫脹のため当科を初診した.同日手背部創感染と診断し,局所麻酔下に洗浄・デブリドマンを行い,抗菌薬点滴を開始したが感染状態は改善せず,術後8日目に創を開放し,洗浄・デブリドマンを連日行うことで感染は鎮静化した.術後15日目に手背部開放創の管理...

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Published inJournal of UOEH Vol. 37; no. 3; pp. 185 - 190
Main Authors 福本, 恵三, 酒井, 昭典, 藤谷, 晃亮, 善家, 雄吉, 目貫, 邦隆, 篠根, 理孝
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 学校法人 産業医科大学 2015
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ISSN0387-821X
2187-2864
DOI10.7888/juoeh.37.185

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Summary:陰圧閉鎖療法negative pressure wound therapy(NPWT)は皮膚欠損創の治療に有効性が確立されている.しかし,エアリークが容易に生じるため手外科分野において応用が難しい.今回手術用手袋を併用しNPWTを手部に用いて治療を行った2症例を経験したので報告する.症例1:37歳男性,人を殴って右手背部を受傷し,受傷より3日目に創部の疼痛・腫脹のため当科を初診した.同日手背部創感染と診断し,局所麻酔下に洗浄・デブリドマンを行い,抗菌薬点滴を開始したが感染状態は改善せず,術後8日目に創を開放し,洗浄・デブリドマンを連日行うことで感染は鎮静化した.術後15日目に手背部開放創の管理目的にNPWTと手術用手袋を併用した.徐々に創内部より良好な肉芽形成が得られたため,術後29日目に局所転位皮弁に加えて全層植皮術を行い創閉鎖した.症例2:43歳男性,作業中にグリースを左手背部に誤って注入して受傷した.受傷翌日に当科を受診し,同日洗浄・デブリドマンを施行した.術後2日目に再手術を行い,閉鎖が出来ない創に対して人工真皮でカバーした上,NPWTと手術用手袋を併用した.徐々に創内部より良好な肉芽形成が得られ腫脹も軽減してきたため,術後9日目に腓腹神経からの神経移植術とともに創閉鎖,全層植皮術を行った.手背部軟部組織欠損に対する創管理において,NPWTと手術用手袋を併用し早期リハビリを行った結果,良好な創閉鎖と手指機能回復を得た.
ISSN:0387-821X
2187-2864
DOI:10.7888/juoeh.37.185