呼吸器病症候群(BRDC)の子牛における加療前後の血中ハプトグロビン濃度測定

牛の急性相タンパクであるハプトグロビン(Hp)は,主要な炎症マーカーのひとつとされているが,産業動物臨床現場において治療効果を判定する検査項目としては未だ活用されていない.そのため,Hpが治療後の疾病病態を反映するかどうかデータの蓄積を重ね,臨床において測定が有用か検討する必要がある.本研究では,子牛の呼吸器病症候群(BRDC)症例において抗生物質製剤治療前後のHpと他炎症マーカーの推移を調査することで,治療による改善を反映するかどうか検討した.まず試験1では,公設酪農試験場でBRDCを呈したホルスタイン種子牛8頭において,第1〜8病日までの血中Hp濃度と白血球数(WBC)を測定した.試験2で...

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Published in産業動物臨床医学雑誌 Vol. 12; no. 4; pp. 188 - 192
Main Authors 松井, 義貴, 森好, 政晴, 澤向, 豊, 杉浦, 智親, 中村, 正明, 小山, 毅
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会・九州沖縄産業動物臨床研究会 2022
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ISSN1884-684X
2187-2805
DOI10.4190/jjlac.12.188

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Summary:牛の急性相タンパクであるハプトグロビン(Hp)は,主要な炎症マーカーのひとつとされているが,産業動物臨床現場において治療効果を判定する検査項目としては未だ活用されていない.そのため,Hpが治療後の疾病病態を反映するかどうかデータの蓄積を重ね,臨床において測定が有用か検討する必要がある.本研究では,子牛の呼吸器病症候群(BRDC)症例において抗生物質製剤治療前後のHpと他炎症マーカーの推移を調査することで,治療による改善を反映するかどうか検討した.まず試験1では,公設酪農試験場でBRDCを呈したホルスタイン種子牛8頭において,第1〜8病日までの血中Hp濃度と白血球数(WBC)を測定した.試験2では,一般酪農家で飼養されているホルスタイン子牛13頭の第1病日と第2・3病日のどちらか一方でHpとα-1酸性糖タンパク濃度(AGP)を測定した. 試験1では,5日間の加療により全頭で症状が改善した.Hpは,第1病日で中央値695μg/mℓを示したが,第8病日では中央値が78μg/mℓと有意に低下した(p<0.01).一方で,WBCは第8病日まで大きな変化がみられなかった.Friedman検定ではHpは有意差があった(p<0.01)が,WBCは有意差がなかった(p=0.09).試験2において,Hpが第1病日で既報参考値より上昇していたのは13頭中5頭(38%)のみだった.加療に反応し,そのうちの4頭のHpが第2・3病日までに低下した.一方,AGPが第1から2・3病日で既報の参考値より上昇していた個体は2頭(15%)のみであった.以上の成績から,一部のBRDC子牛において治療前のHp値上昇が認められたが,治療経過とともに低下傾向を示した.HpはWBCやAGPと比べ,異常を検出しうる可能性があり,加療に反応して低下したことから,Hpは病状を的確に反映する主要な検査項目であることが示唆された.
ISSN:1884-684X
2187-2805
DOI:10.4190/jjlac.12.188