Propionibacterium acnes関連腹膜炎によりVPシャント後に繰り返し肩への放散痛を呈した一例

脳室腹腔(VP)シャント術は水頭症に対して一般的に行われ,手術に伴ういくつかの合併症についてもよく知られている.一方,VPシャント後に迷入した腹側カテーテルによる横隔膜の刺激に伴う肩への放散痛は稀な合併症として数例の報告があるのみである.今回,Propionibacterium acnes(P. acnes)関連腹膜炎による腹膜の炎症と癒着のため,VPシャント再建術後にも繰り返し肩への放散痛を呈した9歳女児の症例を経験した.P. acnesは一般培養検査で検出されず,16SリボソームRNA遺伝子ポリメラーゼ連鎖反応(16SrRNA遺伝子PCR)および嫌気性培養,増菌培養で検出され,十分な抗生剤...

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Published inJournal of UOEH Vol. 42; no. 2; pp. 209 - 216
Main Authors 浅井, 完, 山本, 淳考, 小川, 将人, 齋藤, 健, 本田, 裕子, 保科, 隆之, 鈴木, 恒平, 山内, 健, 酒井, 恭平, 宮川, 正
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 学校法人 産業医科大学 01.06.2020
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ISSN0387-821X
2187-2864
DOI10.7888/juoeh.42.209

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Summary:脳室腹腔(VP)シャント術は水頭症に対して一般的に行われ,手術に伴ういくつかの合併症についてもよく知られている.一方,VPシャント後に迷入した腹側カテーテルによる横隔膜の刺激に伴う肩への放散痛は稀な合併症として数例の報告があるのみである.今回,Propionibacterium acnes(P. acnes)関連腹膜炎による腹膜の炎症と癒着のため,VPシャント再建術後にも繰り返し肩への放散痛を呈した9歳女児の症例を経験した.P. acnesは一般培養検査で検出されず,16SリボソームRNA遺伝子ポリメラーゼ連鎖反応(16SrRNA遺伝子PCR)および嫌気性培養,増菌培養で検出され,十分な抗生剤治療の後,脳室心房(VA)シャント術を施行し,その後肩への放散痛は再燃なく経過している.腹側カテーテルによる横隔膜への器械的な刺激は肩への放散痛を引き起こし,カテーテルの入れ替えによって改善するとされるが,感染性腹膜炎による腹膜の炎症や癒着はカテーテルの入れ替え後も症状を再燃させる因子になる可能性がある.稀ながら腹側カテーテルによる肩への放散痛はVPシャントの合併症として認識する必要がある.また,カテーテル交換後も症状再燃を繰り返す際には,弱毒菌による感染症の除外のためPCRや嫌気・増菌培養を行い,VAシャントへの切り替えを検討する必要がある.
ISSN:0387-821X
2187-2864
DOI:10.7888/juoeh.42.209