広色域ディスプレイの多原色化による異常3色覚のオブザーバメタメリズム軽減シミュレーション

ディスプレイの広色域化に伴う問題として,オブザーバメタメリズムが指摘されている.Ramanath(2008)は,原色の分光分布が狭帯域である広色域ディスプレイでは,標準観測者と実際の観測者の等色関数の差が反映されやすく,オブザーバメタメリズムによる色差が大きくなることを報告した.さらに,須長ら(2017)は,標準観測者と大きく異なる等色関数をもつ異常3色覚の被験者にて,オブザーバメタメリズムが顕著に現れることを示した.この問題は,ディスプレイの多原色化により解決できる可能性がある.本研究では,多原色ディスプレイがオブザーバメタメリズムを軽減できるかをシミュレーションにより確かめた.ディスプレイ...

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Published in日本色彩学会誌 Vol. 43; no. 3; p. 219
Main Authors 須長, 正治, 桂, 重仁, 矢口, 博久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本色彩学会 01.05.2019
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ISSN0389-9357
2189-552X
DOI10.15048/jcsaj.43.3__219

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Summary:ディスプレイの広色域化に伴う問題として,オブザーバメタメリズムが指摘されている.Ramanath(2008)は,原色の分光分布が狭帯域である広色域ディスプレイでは,標準観測者と実際の観測者の等色関数の差が反映されやすく,オブザーバメタメリズムによる色差が大きくなることを報告した.さらに,須長ら(2017)は,標準観測者と大きく異なる等色関数をもつ異常3色覚の被験者にて,オブザーバメタメリズムが顕著に現れることを示した.この問題は,ディスプレイの多原色化により解決できる可能性がある.本研究では,多原色ディスプレイがオブザーバメタメリズムを軽減できるかをシミュレーションにより確かめた.ディスプレイのRGB3原色の波長はITU-RのBT. 2100の規格,観察者は,Yaguchiら(2018)のモデルを使用し2型異常3色覚を想定した.シミュレーションでは,テスト色27色に対するオブザーバメタメリズムによる色差が最小になるように,追加した原色の波長,及びRGBを含めた原色の強度を最適化した.結果として,5原色とすることで,3原色と比較し平均色差を7%までに小さくできることがわかった.
ISSN:0389-9357
2189-552X
DOI:10.15048/jcsaj.43.3__219