HACCPシステムに用いる微生物管理手法の実証実験に関する研究2

(緒言) 食品衛生法が改正され,2021年6月から全ての食品等事業者に危害要因分析重要管理点(HACCP)に沿った衛生管理が義務化された1).小規模食品事業者には「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」が求められ,それらの実施状況を確認する上で,施設や調理器具等の衛生状態を視覚的に確認する簡易検査が求められている.本研究は市井の食品事業者がHACCPに対応した衛生管理をすることを目的とし,簡易的な環境微生物の測定方法を検討した.(研究方法)1.施設 小規模食品事業所として,病院の給食施設並びに飲食施設1(フランチャイズ)及び2(個人経営)を選定した.2.環境微生物の採取と汚染状況の把握1)空...

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Published in千葉県立保健医療大学紀要 Vol. 16; no. 1; p. 1_154
Main Authors 生魚, 薫, 田淵, 梨央, 菊池, 裕, 石岡, 憲昭, 一條, 知昭, 菅原, 満希乃, 工藤, 美奈子, 山崎, 丘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 千葉県立保健医療大学 31.03.2025
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ISSN1884-9326
2433-5533
DOI10.24624/cpu.16.1_1_154

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Summary:(緒言) 食品衛生法が改正され,2021年6月から全ての食品等事業者に危害要因分析重要管理点(HACCP)に沿った衛生管理が義務化された1).小規模食品事業者には「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」が求められ,それらの実施状況を確認する上で,施設や調理器具等の衛生状態を視覚的に確認する簡易検査が求められている.本研究は市井の食品事業者がHACCPに対応した衛生管理をすることを目的とし,簡易的な環境微生物の測定方法を検討した.(研究方法)1.施設 小規模食品事業所として,病院の給食施設並びに飲食施設1(フランチャイズ)及び2(個人経営)を選定した.2.環境微生物の採取と汚染状況の把握1)空中浮遊微生物数の算出 エアサンプラー(株式会社アイデック空中浮遊菌サンプラーIDC-500B)を用い,作業中の模擬施設及び喫食中の飲食施設で空中浮遊微生物を衝突法で寒天培地に捕集し,吸引空気量1,000 L中の好気性微生物数と真菌(かび,酵母)を測定した.2)製造施設の微生物汚染状況の把握 食品・環境衛生検査用フードスタンプ「ニッスイ」(日水製薬株式会社)を用い,各施設でパススルー,生食台及び配膳台を対象とし,病院では移動台を,飲食施設では客飲食卓をそれぞれ対象に加えて,一般細菌数及び真菌数(培地面積10 cm2)を測定した.3)スワブATPふき取り検査による汚染状況の把握 フードスタンプと同じ場所をルシパックpen(キッコーマンバイオケミファ株式会社)のスワブでふき取り(100 cm2),ルミテスター(キッコーマンバイオケミファ株式会社)でATP量を測定した. すべてのデータは,Excelの統計関数を用いて解析した.(結果) エアサンプラーで測定した好気性微生物数及び真菌数は,作業中と作業後で有意な増減が認められなかった. フードスタンプで測定した一般細菌数及び真菌数が示す清掃後の清潔度は,病院では移動台を除く測定箇所で基準値に達していた.飲食施設では清掃後の残存率が減少して基準値に達した測定箇所もあるが,パススルーや客飲食台で残存率が上昇した箇所もあった. ATPふき取り検査の結果は,病院では移動台を除く測定箇所で残存率が減少し,清掃後の生食台及び配膳台はATP量の推奨基準値に達していた.飲食施設では清掃後の残存率が減少した測定箇所はいずれも推奨基準値には達せず,パススルーや客飲食卓では残存率が上昇した箇所もあった.(考察) 今回行った3種類の検査方法は,食品施設の微生物汚染状況を把握可能で,衛生管理の重要性を視覚的に訴える資料としての運用も可能であることが示唆された.特にスワブATPふき取り検査は操作も簡易で,作業終了直後に測定箇所の汚染を視覚的に捉えられる.衛生管理の重要性を示す説得力のある資料として各施設の従業員に示すことが可能なことから,小規模食品事業者が導入して活用することが期待される.(補遺) 今回測定した飲食施設は汚染度が高く,清掃後に一般細菌数及び真菌数並びにATP残存率が上昇した箇所も見受けられた.同じ布巾を洗浄せずに終日使用していること,アルコールの噴霧が十分でないことが要因と考え,これら飲食施設で再度の測定を行なった.先と同じ測定箇所に消毒用エタノールを噴霧し,布巾ではなく使い捨てのキムタオルで拭き上げ後に,スワブATP拭き取り検査を行った.基準値に達した箇所はなかったが,客飲食卓一箇所を除いて清掃後の残存率は減少し,清掃に用いる布巾の管理やアルコール噴霧の重要性が示唆された.(利益相反) 本研究に関連して開示すべき利益相反関係にある企業等はない.
ISSN:1884-9326
2433-5533
DOI:10.24624/cpu.16.1_1_154