完全内臓逆位に合併した肺癌に対する胸腔鏡下肺葉切除術

完全内臓逆位は,各臓器が左右逆転し正常位に対して鏡面像的位置関係にあるものをいい,頻度は10,000人に1~2人と稀にみられる常染色体劣性遺伝の破格である.今回,完全内臓逆位に合併した原発性肺癌に対して,胸腔鏡下手術を施行した報告をする.症例は61歳女性.胸部X線写真で左上肺野に異常陰影を指摘され紹介となる.胸腹部CTにて胸腹部内臓の完全逆位に加え,左肺上葉S2に葉間胸膜に接する25 × 12 mmの結節影を認めた.術前検査にて左上葉肺癌疑いc-T1bN0M0 Stage IAとして手術を行う方針とした.術前3D構築画像にて鏡面像を呈した肺動静脈および気管支の立体的構造を把握した.手術は腫瘍を...

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Published inJournal of UOEH Vol. 40; no. 3; pp. 237 - 241
Main Authors 井上, 政昭, 田中, 文啓, 金山, 雅俊, 吉田, 順一
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 学校法人 産業医科大学 01.09.2018
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ISSN0387-821X
2187-2864
DOI10.7888/juoeh.40.237

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Summary:完全内臓逆位は,各臓器が左右逆転し正常位に対して鏡面像的位置関係にあるものをいい,頻度は10,000人に1~2人と稀にみられる常染色体劣性遺伝の破格である.今回,完全内臓逆位に合併した原発性肺癌に対して,胸腔鏡下手術を施行した報告をする.症例は61歳女性.胸部X線写真で左上肺野に異常陰影を指摘され紹介となる.胸腹部CTにて胸腹部内臓の完全逆位に加え,左肺上葉S2に葉間胸膜に接する25 × 12 mmの結節影を認めた.術前検査にて左上葉肺癌疑いc-T1bN0M0 Stage IAとして手術を行う方針とした.術前3D構築画像にて鏡面像を呈した肺動静脈および気管支の立体的構造を把握した.手術は腫瘍を胸腔鏡下に部分切除を行い,迅速病理検査で腺癌と診断されたため完全胸腔鏡下に左上葉切除およびリンパ節郭清を施行した.左縦隔に下行大動脈は認めず,左肺は上中下葉の3葉に分葉していた.左右鏡面像であったが,正常解剖の際の手技,手順で施行可能であった.完全内臓逆位の手術においては,つねに反対側の胸腔をイメージしながらの手術となる.そのため術前に肺血管,気管支の解剖学的評価を十分に行った上での慎重な手術操作が必要となる.
ISSN:0387-821X
2187-2864
DOI:10.7888/juoeh.40.237