岩手県での脂質低下療法の全県実態調査 ガイドライン目標値についての考察

欧米に比較して日本では脂質低下療法の臨床的有用性が明らかにされていない。1997年に日本動脈硬化学会は、疫学研究の結果を基に高脂血症診療ガイドラインを発表し、2002年に動脈硬化性疾患診療ガイドラインに改定した。このガイドラインが臨床現場でどのように活用されているのかは不明である。今回、岩手県全県を対象にガイドラインの管理目標値達成率の観点から、無作為抽出アンケートによる脂質低下療法の実態調査を行った。解析対象は薬物療法中の823名 (男257名、女566名) で、84.1%がスタチン系薬剤を服用していた。7.9%がスタチン高用量投与を、13.6%が他剤併用療法を受けていた。血清総コレステロー...

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Published in日本循環器病予防学会誌 Vol. 39; no. 2; pp. 111 - 119
Main Authors 平盛, 勝彦, 鈴木, 一幸, 佐藤, 譲, 瀬川, 郁夫, 金子, 能人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本循環器管理研究協議会 30.04.2004
日本循環器管理研究協議会
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ISSN1346-6267
DOI10.11381/jjcdp2001.39.111

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Summary:欧米に比較して日本では脂質低下療法の臨床的有用性が明らかにされていない。1997年に日本動脈硬化学会は、疫学研究の結果を基に高脂血症診療ガイドラインを発表し、2002年に動脈硬化性疾患診療ガイドラインに改定した。このガイドラインが臨床現場でどのように活用されているのかは不明である。今回、岩手県全県を対象にガイドラインの管理目標値達成率の観点から、無作為抽出アンケートによる脂質低下療法の実態調査を行った。解析対象は薬物療法中の823名 (男257名、女566名) で、84.1%がスタチン系薬剤を服用していた。7.9%がスタチン高用量投与を、13.6%が他剤併用療法を受けていた。血清総コレステロールのガイドラインの管理目標値達成率は、全体では54.2%、カテゴリー別では危険因子を有さない群 (カテゴリーA) が80.0%、冠動脈疾患がなくかつ危険因子を有する群 (カテゴリーB) が57.0%、冠動脈疾患を有する群 (カテゴリーC) が26.0%であった。血清LDLコレステロール目標値達成率は、全体で64.4%、カテゴリー別ではAが87.9%、Bが67.0%、Cが31.0%であり、リスクの高い患者での管理目標値達成率が低かった。また、血清HDLコレステロールは全体で70.9%、中性脂肪は63.7%の目標値達成率であった。日本人での脂質低下療法の有効性がいまだ明らかではない現状で、ガイドラインが臨床現場に浸透しつつある。
ISSN:1346-6267
DOI:10.11381/jjcdp2001.39.111