数唱や無意味音列の復唱は可能であるが複数単語の復唱に困難を示した失語症例 言語性短期記憶についての一考察

数唱や無意味音列の復唱は保持されているが,複数の単語や短文の復唱に困難を示した失語症例を経験し,本症例の言語性短期記憶障害について考察した。症例は70 歳の右利き,男性で,左中側頭回の脳腫瘍を摘出した。術後,発話は流暢であるが喚語困難を認める軽度の失語症を呈した。数唱は7 桁,無意味音列は8 モーラまで復唱可能であった。一方,2 モーラの単語を5 語連続して復唱できず,5 文節の短文の復唱は困難であった。また聴覚呈示された複数の単語に対して呈示順に眼前の線画を指示する課題は3 語で困難を示したが,漢字による視覚呈示された複数の単語に対して呈示順に線画を指示する課題では3 語は可能であった。この...

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Published in高次脳機能研究 (旧 失語症研究) Vol. 34; no. 1; pp. 17 - 25
Main Authors 今井, 眞紀, 宮﨑, 泰広, 藤代, 裕子, 種村, 純
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本高次脳機能学会 31.03.2014
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ISSN1348-4818
1880-6554
DOI10.2496/hbfr.34.17

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Summary:数唱や無意味音列の復唱は保持されているが,複数の単語や短文の復唱に困難を示した失語症例を経験し,本症例の言語性短期記憶障害について考察した。症例は70 歳の右利き,男性で,左中側頭回の脳腫瘍を摘出した。術後,発話は流暢であるが喚語困難を認める軽度の失語症を呈した。数唱は7 桁,無意味音列は8 モーラまで復唱可能であった。一方,2 モーラの単語を5 語連続して復唱できず,5 文節の短文の復唱は困難であった。また聴覚呈示された複数の単語に対して呈示順に眼前の線画を指示する課題は3 語で困難を示したが,漢字による視覚呈示された複数の単語に対して呈示順に線画を指示する課題では3 語は可能であった。この複数の単語を呈示順に線画を指示する課題では,音声と文字の入力モダリティーによる成績差を認めた。以上の結果から,数唱,音節列と単語に関する短期記憶の処理過程が異なることを示唆した。
ISSN:1348-4818
1880-6554
DOI:10.2496/hbfr.34.17