好酸球性鼻副鼻腔炎に対するDupilumab導入症例における呼吸症状の検討

IL-4/IL-13のシグナル伝達を阻害する分子標的薬Dupilumabが2019年に重症気管支喘息,2020年には好酸球性鼻副鼻腔炎(ECRS)を含む鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(CRSwNP)の適用を取得し,いずれもその有用性が報告されている。しかしながら,ECRSと気管支喘息は高率に合併する疾患であるにもかかわらず,ECRSに対してDupilumabを開始した症例の喘息を中心とした呼吸症状の変化に関して多くの報告はなされていない。今回我々は2020年7月から2023年4月までにECRSに対して当科でDupilumabを開始し,気管支喘息を合併した17症例に対し,喘息合併の割合や呼吸機能,呼吸器...

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Published in日本鼻科学会会誌 Vol. 64; no. 1; pp. 96 - 101
Main Authors 伊藤, 吏, 千葉, 真人, 鈴木, 祐輔, 野内, 雄介, 渡邊, 千尋, 安孫子, 佑子, 川合, 唯
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本鼻科学会 2025
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ISSN0910-9153
1883-7077
DOI10.7248/jjrhi.64.96

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Summary:IL-4/IL-13のシグナル伝達を阻害する分子標的薬Dupilumabが2019年に重症気管支喘息,2020年には好酸球性鼻副鼻腔炎(ECRS)を含む鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(CRSwNP)の適用を取得し,いずれもその有用性が報告されている。しかしながら,ECRSと気管支喘息は高率に合併する疾患であるにもかかわらず,ECRSに対してDupilumabを開始した症例の喘息を中心とした呼吸症状の変化に関して多くの報告はなされていない。今回我々は2020年7月から2023年4月までにECRSに対して当科でDupilumabを開始し,気管支喘息を合併した17症例に対し,喘息合併の割合や呼吸機能,呼吸器症状の変化について検討を行った。喘息治療として,15例は吸入ステロイド薬(ICS)+長時間作動型β2刺激薬(LABA)が,1例でICS単剤が,1例で短時間作動型β2刺激薬(SABA)単剤が使用されていた。喘息治療のコントロール指標である喘息コントロールテスト(ACT)では導入前21.1から導入後6か月で23.5と改善を認めた。また,同テストでコントロール不良とされる20点未満の症例は導入前8症例あったが,導入後4週,24週では認めなかった。呼吸機能検査では1秒量(L)が導入前2.63から導入後6か月で2.93と改善を認めた。本検討により,ECRSに対してDupilumab投与を行った症例では高率に気管支喘息を合併しており,導入により気管支喘息のコントロール状況が改善することが分かった。気管支喘息合併のECRS患者にDupilumabを投与する際には,呼吸機能の改善に伴うQOLの改善が見込めることも強調できると考えられた。
ISSN:0910-9153
1883-7077
DOI:10.7248/jjrhi.64.96