脳腫瘍を合併した舌痛症( 6 例)の臨床的特徴について
舌痛症と診断した症例の中に 6 例の脳腫瘍を確認した。6 例全例が小脳橋角部腫瘍であり、聴神経腫瘍 3 例、血管腫、三叉神経鞘腫、髄膜腫が各々 1 例であった。腫瘍の存在に気付いたのは舌痛発症後 5 年を経過した症例もあったが、約 3 年であった症例が 3 例であった。貴重な時を奪ってしまった責任は治療側にある。なぜに、脳腫瘍を見過ごしたのか、それを避ける方法について症例の提示と当科での舌痛症例の統計、他家よりの報告例で検討した。その結果、「舌痛症は心因性疾患である」、「舌痛は食事中には認めない」とする舌痛症の特徴の盲信に pitfall があったことを確認した。その pitfall に陥らな...
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Published in | 耳鼻と臨床 Vol. 67; no. 4; pp. 269 - 278 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
耳鼻と臨床会
20.07.2021
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Subjects | |
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ISSN | 0447-7227 2185-1034 |
DOI | 10.11334/jibi.67.4_269 |
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Summary: | 舌痛症と診断した症例の中に 6 例の脳腫瘍を確認した。6 例全例が小脳橋角部腫瘍であり、聴神経腫瘍 3 例、血管腫、三叉神経鞘腫、髄膜腫が各々 1 例であった。腫瘍の存在に気付いたのは舌痛発症後 5 年を経過した症例もあったが、約 3 年であった症例が 3 例であった。貴重な時を奪ってしまった責任は治療側にある。なぜに、脳腫瘍を見過ごしたのか、それを避ける方法について症例の提示と当科での舌痛症例の統計、他家よりの報告例で検討した。その結果、「舌痛症は心因性疾患である」、「舌痛は食事中には認めない」とする舌痛症の特徴の盲信に pitfall があったことを確認した。その pitfall に陥らないためには舌痛が舌の片側辺縁である症例には安易に舌痛症と診断してはいけないことを知った。 舌痛症例 453 例中 57 例(12.6%)が片側辺縁であり、その内 6 例(10.5%)が脳腫瘍であった。突発性難聴で聴神経腫瘍である率は 0.8 − 5.7%と報告されているが、それよりも高率であることは銘記すべき事実である。自発性異常味覚を自覚する率は舌痛症で 41.2%であったのに対して腫瘍例では 6 例中 0 例であった。耳鳴を自覚することがある率は舌痛症では 51.9%で、腫瘍例では 6 例全例が患側に耳鳴を自覚することがあった。 難聴・耳鳴の有無を問うことは重要であるが、左右を問いただすことでさらに重要な情報となる。それら項目を慎重に吟味して対応を決めるべきと考えている。Pitfall に陥らないためには、片側辺縁の舌痛を訴え局所に異常などなく舌痛症を疑いたい症例では、舌痛症と確診する前に、耳鳴・難聴、味覚障害の自覚症状の有無にかかわらず聴力検査、電気味覚機能検査をすべきであり、そこで異常が確認されれば速やかに MRI を行うべきと結論した。 |
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ISSN: | 0447-7227 2185-1034 |
DOI: | 10.11334/jibi.67.4_269 |