甲状腺内胸腺癌(intrathyroid thymic carcinoma)の 1 例

症例は 56 歳、男性。嗄声を主訴とし喉頭内視鏡検査にて左声帯麻痺を認め、超音波検査、造影 CT で甲状腺左葉下極に境界不明瞭な腫瘍陰影を認めた。穿刺吸引細胞診では乳頭癌の特徴を示さず核異型が強い悪性細胞を認め、甲状腺癌やその他の悪性腫瘍を疑い甲状腺左葉切除術・傍気管郭清術を施行した。手術では腫瘍が浸潤した反回神経や胸骨甲状筋、副甲状腺、周囲脂肪組織を一塊に切除した。免疫組織化学染色では CD5 陽性、サイログロブリン・TTF-1 陰性であり甲状腺内胸腺癌と診断された。切除断端は陰性で遠隔転移もなく経過観察とした。甲状腺内胸腺癌は浸潤傾向が強いが、甲状腺未分化癌や甲状腺扁平上皮癌と比較し経過が...

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Published in耳鼻と臨床 Vol. 69; no. 3; pp. 214 - 220
Main Authors 野田, 美月, 山内, 盛泰, 嶋崎, 絵里子, 倉富, 勇一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 耳鼻と臨床会 20.05.2023
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ISSN0447-7227
2185-1034
DOI10.11334/jibi.69.3_214

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Summary:症例は 56 歳、男性。嗄声を主訴とし喉頭内視鏡検査にて左声帯麻痺を認め、超音波検査、造影 CT で甲状腺左葉下極に境界不明瞭な腫瘍陰影を認めた。穿刺吸引細胞診では乳頭癌の特徴を示さず核異型が強い悪性細胞を認め、甲状腺癌やその他の悪性腫瘍を疑い甲状腺左葉切除術・傍気管郭清術を施行した。手術では腫瘍が浸潤した反回神経や胸骨甲状筋、副甲状腺、周囲脂肪組織を一塊に切除した。免疫組織化学染色では CD5 陽性、サイログロブリン・TTF-1 陰性であり甲状腺内胸腺癌と診断された。切除断端は陰性で遠隔転移もなく経過観察とした。甲状腺内胸腺癌は浸潤傾向が強いが、甲状腺未分化癌や甲状腺扁平上皮癌と比較し経過が緩徐で予後良好であり、治療は根治切除が第一選択である。甲状腺下極に境界不明瞭な腫瘍を認め、細胞診にて乳頭癌細胞とは異なる悪性細胞を認めた場合は本疾患を鑑別に挙げ、断端陰性となる根治切除を行うことが重要と思われた。
ISSN:0447-7227
2185-1034
DOI:10.11334/jibi.69.3_214