希土類元素(レアアース)に着目した中国大都市と首都圏のPM2.5の元素成分と発生源の特徴

2013年1月に中国広域で発生した深刻なPM2.5汚染を契機に、日本国内でもPM2.5への関心が急速に高まった。我々はこれまで、日中で微小エアロゾルの同時採取を行ってきた。希土類元素 (レアアース) は、いわゆるハイテク産業に不可欠な金属元素であるが、そのほとんどが中国で産出される。しかしながら、中国、日本ともに都市部のPM2.5中のレアアース濃度の報告例は限られている。 2013年8月に北京、上海、新宿、加須の4地点で同時に採取したPM2.5に含まれる金属元素の分析を行った。既報の2013年1月の北京のPM2.5データも含め、従来の元素に加え、レアアースに着目した解析を試みた。 北京と上海の...

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Published in大気環境学会誌 Vol. 51; no. 1; pp. 33 - 43
Main Authors 王, 効挙, 刘, 品威, 名古屋, 俊士, 吕, 森林, 柳本, 悠輔, 米持, 真一, 大河内, 博, 大石, 沙紀, 梅沢, 夏実, 张, 文超
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 大気環境学会 2016
Subjects
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ISSN1341-4178
2185-4335
DOI10.11298/taiki.51.33

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Summary:2013年1月に中国広域で発生した深刻なPM2.5汚染を契機に、日本国内でもPM2.5への関心が急速に高まった。我々はこれまで、日中で微小エアロゾルの同時採取を行ってきた。希土類元素 (レアアース) は、いわゆるハイテク産業に不可欠な金属元素であるが、そのほとんどが中国で産出される。しかしながら、中国、日本ともに都市部のPM2.5中のレアアース濃度の報告例は限られている。 2013年8月に北京、上海、新宿、加須の4地点で同時に採取したPM2.5に含まれる金属元素の分析を行った。既報の2013年1月の北京のPM2.5データも含め、従来の元素に加え、レアアースに着目した解析を試みた。 北京と上海の金属元素を比較すると、上海では船舶や石油燃焼、鉄鋼に由来する元素の比率が高く、北京では石炭燃焼に由来する元素の比率が高いことがわかった。冬季の北京では、中国最大級のレアアース鉱床であるBayan obo方面からの気塊の飛来が多かったことから、Bayan oboで採取されたPM10中のレアアースを基準として濃縮係数を求めた結果、北京のPM2.5では、ネオジム (Nd)、ジスプロシウム (Dy) に明瞭な濃縮が見られた。また、エルビウム (Er)、イッテルビウム (Yb) にも濃縮が見られた。レアアースの濃縮の組み合わせから、発生要因となる産業に関する情報が得られる可能性が示唆された。
ISSN:1341-4178
2185-4335
DOI:10.11298/taiki.51.33