皮膚科医の爪診療に対する意識調査(第1報:皮膚科医が対処すべき爪の症状は?)
超高齢社会を迎え,皮膚科診療においても高齢者対応の機会は増えている.なかでも爪の診療に関するニーズは高く,体が不自由のために爪を切れない,独居のために家族に切ってもらえないなど,いわゆる「爪切り難民」も増加している.爪診療には経験とともに処置に十分な時間も必要となるが,多忙な医療の現状を考えると診療報酬上も十分とは言えないとの声も少なくない.あらゆる程度の爪の疾患,トラブルを抱えた全ての患者を皮膚科などの医療施設でケアすることが理想であるが,今後一層高齢者の爪診療のニーズは高まることが予想され,その対策は急務である.そこで,爪診療の状況改善に役立てる目的で,皮膚科医の爪診療に対する意識調査を行...
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| Published in | 日本臨床皮膚科医会雑誌 Vol. 41; no. 3; pp. 459 - 466 |
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| Main Authors | , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
日本臨床皮膚科医会
2024
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| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 1349-7758 1882-272X |
| DOI | 10.3812/jocd.41.459 |
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| Summary: | 超高齢社会を迎え,皮膚科診療においても高齢者対応の機会は増えている.なかでも爪の診療に関するニーズは高く,体が不自由のために爪を切れない,独居のために家族に切ってもらえないなど,いわゆる「爪切り難民」も増加している.爪診療には経験とともに処置に十分な時間も必要となるが,多忙な医療の現状を考えると診療報酬上も十分とは言えないとの声も少なくない.あらゆる程度の爪の疾患,トラブルを抱えた全ての患者を皮膚科などの医療施設でケアすることが理想であるが,今後一層高齢者の爪診療のニーズは高まることが予想され,その対策は急務である.そこで,爪診療の状況改善に役立てる目的で,皮膚科医の爪診療に対する意識調査を行った.皮膚科医1,000名を対象にアンケートの協力依頼をE-mailで行い,174名から有効回答を得た.麻酔の爪切り処置の保険点数60点に関しては,「不当に低い」と回答する皮膚科医が75%以上に上っていた.病的ではなく単に伸びている爪の爪切り処置を「積極的に行う」は全体の19.5%と低く,「皮膚科医の任務ではない」と考える割合も全体の20%超であった.一方,爪囲に肉芽形成を伴う炎症症状を認める陥入爪では,積極的に処置を行う皮膚科医が約80%であり,皮膚科医の責務であるとの認識は十分に浸透していると考えられた.今回のアンケート調査結果より,炎症症状を伴う陥入爪などに対して皮膚科医は積極的に対応していることが確認できたが,炎症を伴わない場合には積極的に取り組む姿勢の皮膚科医は半数以下にとどまり,「皮膚科医の役割とは思わない」「放置する」と考える皮膚科医も少なくなかった.その背景には診療報酬の低さだけでなく,爪疾患やその処置方法について学ぶ機会が乏しく,重要性の認識が低い可能性も考えられた.超高齢社会を迎えた日本でネイルウェルビーイングを実現するためには,診療報酬,研修機会,教育体制など様々な観点からの改善が重要と考えた. |
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| ISSN: | 1349-7758 1882-272X |
| DOI: | 10.3812/jocd.41.459 |