日本総合健診医学会 第50回大会・シンポジウム5 子宮頸がん検診の現状と今後─自己採取HPV 検査の可能性と課題─ 職域における子宮頸がん検診の問題点と展望─自己採取HPV検査活用の可能性と課題
職域におけるがん検診は、我が国のがん対策において非常に重要な役割を担っている。がん検診では「正しい検診」を「正しい方法」で「多くの人に行う(受診率対策)」ことが重要であるが、職域では「受診率対策」が優先され、検診方法の選定や精度管理体制が不十分であることが多い。 子宮頸がん検診においても例外ではなく、エビデンスのない自己採取細胞診が利便性の良さを理由に職域で広く実施されてきた。しかし、「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン2019年度版」において「細胞診は医師採取のみとし、自己採取は認めない」と明示された。合わせて自己採取HPV検査の活用可能性についても示唆された。 自己採取HPV検査...
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Published in | 総合健診 Vol. 49; no. 5; pp. 529 - 534 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本総合健診医学会
10.09.2022
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Online Access | Get full text |
ISSN | 1347-0086 1884-4103 |
DOI | 10.7143/jhep.49.529 |
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Summary: | 職域におけるがん検診は、我が国のがん対策において非常に重要な役割を担っている。がん検診では「正しい検診」を「正しい方法」で「多くの人に行う(受診率対策)」ことが重要であるが、職域では「受診率対策」が優先され、検診方法の選定や精度管理体制が不十分であることが多い。 子宮頸がん検診においても例外ではなく、エビデンスのない自己採取細胞診が利便性の良さを理由に職域で広く実施されてきた。しかし、「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン2019年度版」において「細胞診は医師採取のみとし、自己採取は認めない」と明示された。合わせて自己採取HPV検査の活用可能性についても示唆された。 自己採取HPV検査は、医師採取とほぼ同等の精度であり、主に未受診者対策としての活用が期待される。国内では自治体における未受診対策として実施された報告がいくつか存在するが、職域における報告はない。今回、職域における自己採取HPV検査を活用した未受診対策について良好な成績をおさめた事例を経験したので紹介する。 ワコール健康保険組合は、2019年度の子宮頸がん検診未受診者(30歳以上)に対して自己採取HPV検査キットを送付し、その後の検診受診状況を分析した。結果、対象者の約3割が検体を返送し、HPV陽性者の約8割、陰性者の約6割が検診を受診した。さらに、キットを未返送だった約7割の対象者のうち、約5割が検診を受診した。キットの送付自体が検診への意識を高め、受診に繋がったものと考えられる。 このように、自己採取HPV検査は職域においても非常に効果的な受診勧奨ツールであることが示唆された。ただし、実施に際してはHPV陽性者を確実に医師採取細胞診へ誘導する運用の構築が必須であり、職域における自己採取HPV検査実施ガイドライン制定が望まれる。 |
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ISSN: | 1347-0086 1884-4103 |
DOI: | 10.7143/jhep.49.529 |