腹部鈍的外傷によって発症した左鼠径ヘルニアに関連する小腸穿孔の1例

症例は77歳,男性。ソファーに横になっていたところ,5歳の孫が飛び乗り,孫の膝が腹部に当たり受傷した。その後に腹痛が持続するため,当院の救急外来を受診した。来院時の腹部造影CTでは腹腔内に明らかな遊離ガス像は認めなかったが,少量の腹水を認め,経過観察を目的とした入院とした。翌朝に再検したCTでは,明らかな腹腔内遊離ガス像の出現,腹水の増加を認め,緊急手術の方針とした。Treitz靭帯より約150cmの小腸に直径5mm程度の穿孔部を認め,縫合閉鎖した。また左鼠径ヘルニア(日本ヘルニア学会分類 M2型)を認めた。再度入院時のCTを後方視的に検討すると,左鼠径ヘルニア囊内にはすでにわずかな遊離ガスを...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 45; no. 1; pp. 29 - 32
Main Authors 秋元, 寿文, 青笹, 季文, 小野, 聡, 高藤, 康, 志田, 晴彦, 内山, 真, 石川, 達郎, 加藤, 琢也, 野田, 和雅
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.01.2025
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.45.29

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Summary:症例は77歳,男性。ソファーに横になっていたところ,5歳の孫が飛び乗り,孫の膝が腹部に当たり受傷した。その後に腹痛が持続するため,当院の救急外来を受診した。来院時の腹部造影CTでは腹腔内に明らかな遊離ガス像は認めなかったが,少量の腹水を認め,経過観察を目的とした入院とした。翌朝に再検したCTでは,明らかな腹腔内遊離ガス像の出現,腹水の増加を認め,緊急手術の方針とした。Treitz靭帯より約150cmの小腸に直径5mm程度の穿孔部を認め,縫合閉鎖した。また左鼠径ヘルニア(日本ヘルニア学会分類 M2型)を認めた。再度入院時のCTを後方視的に検討すると,左鼠径ヘルニア囊内にはすでにわずかな遊離ガスを認めていた。急激な腹腔内圧上昇によるヘルニア囊内での腸管穿孔はまれにみられ,本症例も左鼠径ヘルニアとの関連性が示唆された。鼠径ヘルニアに合併した外傷性腸管穿孔について文献的な考察を含め報告する。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.45.29