寒冷地のプラウ耕鎮圧体系乾田直播栽培における堆肥・尿素施用体系が水稲の生育および収量に及ぼす影響

東北地域では,担い手の高齢化や減少と長引く米価の下落により水稲栽培での省力低コスト栽培が求められ,プラウ耕鎮圧体系乾田直播(プラウ耕乾田直播)の栽培面積が広がりつつある.しかし,プラウ耕乾田直播で多く使われている肥効調節型窒素肥料は今後,環境への影響から使用が難しくなることが想定される.そこで,本研究では寒冷地のプラウ耕乾田直播栽培において堆肥と尿素による窒素単肥体系(単肥区)が水稲の生育および収量に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.岩手県盛岡市の多湿黒ボク土水田において「あきたこまち」を用いて肥効調節型窒素肥料を用いた慣行施肥体系と単肥区を比較したところ,苗立ち,生育および全刈収量に...

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Published in日本作物学会紀事 Vol. 94; no. 3; pp. 279 - 293
Main Authors 冠 秀昭, 田中 惣士, 篠遠 善哉, 古畑 昌巳, 屋比久 貴之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本作物学会 05.07.2025
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ISSN0011-1848
1349-0990
DOI10.1626/jcs.94.279

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Summary:東北地域では,担い手の高齢化や減少と長引く米価の下落により水稲栽培での省力低コスト栽培が求められ,プラウ耕鎮圧体系乾田直播(プラウ耕乾田直播)の栽培面積が広がりつつある.しかし,プラウ耕乾田直播で多く使われている肥効調節型窒素肥料は今後,環境への影響から使用が難しくなることが想定される.そこで,本研究では寒冷地のプラウ耕乾田直播栽培において堆肥と尿素による窒素単肥体系(単肥区)が水稲の生育および収量に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.岩手県盛岡市の多湿黒ボク土水田において「あきたこまち」を用いて肥効調節型窒素肥料を用いた慣行施肥体系と単肥区を比較したところ,苗立ち,生育および全刈収量に有意差は認められなかった.「つきあかり」を用いて農家圃場で実施した現地実証試験(岩手県花巻市,宮城県大崎市)の単肥区では,苗立ち本数は100本 m—2以上であり,全刈収量は平均で600 kg 10 a—1以上であった.さらに,全刈収量と1穂籾数,全刈収量と登熟歩合,総籾数と千粒重にはそれぞれ正の相関関係が認められた.以上の結果,寒冷地のプラウ耕乾田直播における堆肥と尿素による窒素単肥体系では,肥効調節型窒素肥料を用いた慣行体系と比較して水稲の生育および収量が同程度であることが多湿黒ボク土水田で明らかとなり,現地実証試験で概ね600 kg 10 a—1以上の多収が示された.このとき,収量の安定には1穂籾数の確保に加えて,登熟歩合を確保しつつ,総籾数と千粒重の確保の両立が重要であると考えられた.
ISSN:0011-1848
1349-0990
DOI:10.1626/jcs.94.279