全身麻酔下十二指腸ESD術後に発生した縦郭上部膿瘍の1例
内視鏡治療の穿孔報告例は散見されるが,非処置部における穿孔の報告例は稀である.今回,我々は十二指腸腺腫に対するESD後に生じた食道穿孔の1例を経験したので報告する.患者は56歳女性.心窩部痛を主訴に受診.上部消化管内視鏡検査にて,40mm大の十二指腸腺腫を認めた.全身麻酔下でのESDにより一括切除施行した.術後第12病日に37.5℃の発熱,頸部痛を認め,CTで頸部食道背側の上部縦隔に膿瘍を認めた.上部消化管内視鏡検査で,食道内に黄色調の膿汁を認め,食道入口部の6時方向に5mm程度の裂創を認め同部からの排膿を確認した.透視下に裂創から0.035インチのガイドワイヤーを挿入し,8FrEDチューブを...
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Published in | Progress of Digestive Endoscopy Vol. 91; no. 1; pp. 134 - 135 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
2017
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Subjects | |
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ISSN | 1348-9844 2187-4999 |
DOI | 10.11641/pde.91.1_134 |
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Summary: | 内視鏡治療の穿孔報告例は散見されるが,非処置部における穿孔の報告例は稀である.今回,我々は十二指腸腺腫に対するESD後に生じた食道穿孔の1例を経験したので報告する.患者は56歳女性.心窩部痛を主訴に受診.上部消化管内視鏡検査にて,40mm大の十二指腸腺腫を認めた.全身麻酔下でのESDにより一括切除施行した.術後第12病日に37.5℃の発熱,頸部痛を認め,CTで頸部食道背側の上部縦隔に膿瘍を認めた.上部消化管内視鏡検査で,食道内に黄色調の膿汁を認め,食道入口部の6時方向に5mm程度の裂創を認め同部からの排膿を確認した.透視下に裂創から0.035インチのガイドワイヤーを挿入し,8FrEDチューブを留置した.膿瘍は消失し,経口摂取再開でき第38病日に軽快退院となった. 自験例の穿孔の原因として,頸椎が前屈していること,また,C6/7骨棘の存在を考えた.この骨棘と食道後壁との距離は6.8mmと短く,全身麻酔の挿管チューブ留置下において内視鏡と骨棘に挟まれた食道後壁が挫滅し穿孔に至ったと考えた. 自験例のような穿孔の予防策として,ESD術前のCTにおいて食道と椎体の距離を計測すること,頸椎の変形を確認することの重要性を考えた.しかし,明確な穿孔リスクの基準は不明であり,術後の慎重な頸部痛の聴取を心がけるべきである. |
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ISSN: | 1348-9844 2187-4999 |
DOI: | 10.11641/pde.91.1_134 |