Pectobacterium―日本産軟腐病菌株の再解析

軟腐病菌は,様々な植物種に軟化腐敗症状を引き起こす多犯性病原細菌である。本菌は農耕地および非農耕地を問わず,土壌に低密度で生存していると考えられている。植物根圏で増殖し,地際部等から植物体に侵入・感染した後,宿主組織内で増殖し,一定の菌体密度を越えると病原性因子を発現して病徴を引き起こす。Pectobacterium 属細菌が本病の主な病原として知られている。近年,分子生物学的手法に基づく細菌種の細分類や新種提案が活発に行われるようになり,2025年1 月現在,本属の構成種は22 種まで増加している。国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が運営する農業生物資源ジーンバンクには多くの植物...

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Published in土と微生物 Vol. 79; no. 1; pp. 29 - 34
Main Authors 諸星, 知広, 染谷, 信孝, 澤田, 宏之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本土壌微生物学会 01.04.2025
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ISSN0912-2184
2189-6518
DOI10.18946/jssm.79.1_29

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Summary:軟腐病菌は,様々な植物種に軟化腐敗症状を引き起こす多犯性病原細菌である。本菌は農耕地および非農耕地を問わず,土壌に低密度で生存していると考えられている。植物根圏で増殖し,地際部等から植物体に侵入・感染した後,宿主組織内で増殖し,一定の菌体密度を越えると病原性因子を発現して病徴を引き起こす。Pectobacterium 属細菌が本病の主な病原として知られている。近年,分子生物学的手法に基づく細菌種の細分類や新種提案が活発に行われるようになり,2025年1 月現在,本属の構成種は22 種まで増加している。国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が運営する農業生物資源ジーンバンクには多くの植物病原細菌が所蔵されており,この中には日本国内の様々な地域・分離源から採集された約300 株の軟腐病菌が含まれている。その大半は,分離時に旧名であるErwinia carotovora(現在の分類ではPectobacterium carotovorum に相当する)として同定され,寄託されたものである。本稿ではジーンバンク所蔵の軟腐病菌株の種レベルの再同定結果と,Pectobacterium 属細菌に関する最近の話題について紹介する。
ISSN:0912-2184
2189-6518
DOI:10.18946/jssm.79.1_29