分げつおよび子実着生位置におけるハダカムギ硝子率の変異とその要因

ハダカムギは,硝子質粒の発生が少ないことが望ましいが,その発生機作は不明瞭であり,有効な発生抑制技術も確立されていない.そこで,本研究では分げつおよび穂の子実着生位置ごとに硝子質粒の発生実態を明らかにし,その発生要因についても検討した.硝子質粒は,分げつ別では高位節分げつから,子実着生位置別では穂の下段から多く発生していることが明らかとなった.開花日は分げつ間にバラつきが見られ,高位節分げつほど遅くなった.また,開花日と硝子率との間に正の相関関係が認められ,開花日の遅い穂ほど硝子質粒の発生は多くなった.したがって,分げつ間における硝子率の変異は,開花日の違いに起因すると推察された.硝子率は,登...

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Published in日本作物学会紀事 Vol. 94; no. 3; pp. 209 - 218
Main Authors 松井 菜奈, 畠山 友翔, 原口 晃輔, 荒木 卓哉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本作物学会 05.07.2025
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ISSN0011-1848
1349-0990
DOI10.1626/jcs.94.209

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Summary:ハダカムギは,硝子質粒の発生が少ないことが望ましいが,その発生機作は不明瞭であり,有効な発生抑制技術も確立されていない.そこで,本研究では分げつおよび穂の子実着生位置ごとに硝子質粒の発生実態を明らかにし,その発生要因についても検討した.硝子質粒は,分げつ別では高位節分げつから,子実着生位置別では穂の下段から多く発生していることが明らかとなった.開花日は分げつ間にバラつきが見られ,高位節分げつほど遅くなった.また,開花日と硝子率との間に正の相関関係が認められ,開花日の遅い穂ほど硝子質粒の発生は多くなった.したがって,分げつ間における硝子率の変異は,開花日の違いに起因すると推察された.硝子率は,登熟期後期に低下し,硝子率低下と同タイミングで降雨が確認されたこと,子実含水率が22%以下の子実を吸水させると硝子率が低下したことから,登熟期後期の硝子率の低下は,降雨による乾燥子実の吸水が関与していると考えられた.一方,子実含水率が30%を超える子実は吸水しても硝子率が低下しなかった.収穫前の降雨時において,開花の遅い高位節分げつは開花後日数が短く,子実が乾燥していないことから,粉状質化が起こらず硝子質粒が多く発生したと推察された.また,子実着生位置別では開花後35日~40日において,穂の下段ほど子実含水率が高かったことから,穂の下段ほど硝子質粒が多く発生したと推察された.
ISSN:0011-1848
1349-0990
DOI:10.1626/jcs.94.209