大型飼育水槽の中でのミドリイシ属サンゴの胚および幼生の生残率と鉛直分布の変化

サンゴ礁修復のためのサンゴ幼生の大量飼育を目的として、野外の浮体に取り付けた大型ビニール水槽 (水量3.2t、以下水槽) を用いて、一斉産卵のあとに形成されたスリックから取り込んだミドリイシ属サンゴの胚と幼生を育てた。2003年の実験では、初期密度300-1200個/lのすべての水槽で受精後3日目までに胚数が大きく減少した。2004年の実験でも、同様に受精後3日目までの胚期に大きな減耗が認められた。この間の日間死亡速度は平均で29.6%であった。しかし、プラヌラ幼生になってからの減少は小さく、日間死亡速度は20.3%となり、初期密度の15%にあたる134個体/l、1槽あたりおよそ43万個体の幼...

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Published in日本サンゴ礁学会誌 Vol. 8; no. 2; pp. 77 - 81
Main Authors 横川, 雅恵, 柴田, 早苗, 青田, 徹, 岩尾, 研二, 綿貫, 啓, 大森, 信
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 日本サンゴ礁学会 2007
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ISSN1345-1421
1882-5710
DOI10.3755/jcrs.8.77

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Summary:サンゴ礁修復のためのサンゴ幼生の大量飼育を目的として、野外の浮体に取り付けた大型ビニール水槽 (水量3.2t、以下水槽) を用いて、一斉産卵のあとに形成されたスリックから取り込んだミドリイシ属サンゴの胚と幼生を育てた。2003年の実験では、初期密度300-1200個/lのすべての水槽で受精後3日目までに胚数が大きく減少した。2004年の実験でも、同様に受精後3日目までの胚期に大きな減耗が認められた。この間の日間死亡速度は平均で29.6%であった。しかし、プラヌラ幼生になってからの減少は小さく、日間死亡速度は20.3%となり、初期密度の15%にあたる134個体/l、1槽あたりおよそ43万個体の幼生を着生能力を獲得するまで飼育できた。胚の90%以上が海面付近に集中していたのに対し、それ以降のプラヌラ幼生は、海面から下層までほぼ万遍なく分布していたことから、海面での高密度状態と紫外線、殊にUV-Bへの暴露、および未受精卵などの分解による水質の悪化が胚期減耗の原因であると思われた。胚密度と水質を管理調整し、水槽に覆いをつけて直射日光をさえぎることにより、野外で着生能力をもつ幼生をもっと大量に育てることができるだろう。
ISSN:1345-1421
1882-5710
DOI:10.3755/jcrs.8.77