待遇コミュニケーション(教育)研究へのTEA(複線径路等至性アプローチ)の応用

「待遇コミュニケーション」は、「コミュニケーション主体」の認識により、「場」「人間関係」「意識(意図)」「形式」「内容」(「待遇の諸相」)が連動する複雑で動態的な「行為」である。待遇コミュニケーション(教育)研究(以下、TC研究と呼ぶ)では、そういった待遇の諸相がどのように連動しているのか、その教育研究では、どのような教育を行えば学習者がそれらを連動できるようになるのか、そして、学習者は待遇コミュニケーションをどのように習得していくのかなどを明らかにすることが重要な課題となる。しかしながら、「待遇コミュニケーション」はその動態性や連動性故に、分析することもさることながら、結果をわかりやすく記述...

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Published in待遇コミュニケーション研究 Vol. 22; p. 214
Main Author ウォーカー, 泉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 待遇コミュニケーション学会 01.04.2025
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ISSN1348-8481
2434-4680
DOI10.32252/tcg.22.0_214

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Summary:「待遇コミュニケーション」は、「コミュニケーション主体」の認識により、「場」「人間関係」「意識(意図)」「形式」「内容」(「待遇の諸相」)が連動する複雑で動態的な「行為」である。待遇コミュニケーション(教育)研究(以下、TC研究と呼ぶ)では、そういった待遇の諸相がどのように連動しているのか、その教育研究では、どのような教育を行えば学習者がそれらを連動できるようになるのか、そして、学習者は待遇コミュニケーションをどのように習得していくのかなどを明らかにすることが重要な課題となる。しかしながら、「待遇コミュニケーション」はその動態性や連動性故に、分析することもさることながら、結果をわかりやすく記述することも容易ではない。そこで、本研究では「意識」を研究の専門領域としている文化心理学から生まれた質的研究方法であるTEA(複線径路等至性アプローチ)をTC研究に応用することにより、研究方法としての可能性と課題について検討した。TEAは、TEM(Trajectory Equifinality Model複線径路等至性モデリング)とTLMG(Three Layers Model of Genesis発生の三層モデル) とHSI(Historically Structured Inviting歴史的構造化ご招待)という三つの要素で構成されている。本研究では、これらを用いて高度外国人材の日本語の習得プロセスを明らかにしたウォーカー(2024)The Japanese Language Acquisition Process of Highly Skilled Foreign Human Resources (jatq.jp)の調査協力者の中から、シンガポールで日本語を学び、日本での約5年にわたる就労を経る間に待遇コミュニケーションに対する認識や能力に大差のついた2名に焦点を当てて、待遇コミュニケーションの習得プロセスを描いた。その結果、学習者がどのような径路を得て習得に向かうのか、また、どのような社会的要因が習得を促進したり、逆に疎外したりするのかを可視化することができた。さらに、TLMGによって描かれた行為、記号(気づき)、価値観・信念の三層を待遇コミュニケーションの観点から捉え直すことにより、待遇コミュニケーションに対する認識に影響を与えた要因や、行為と意識の関係を明らかにすることができた。さらに、TEAは行為や感情の微細な変容のメカニズムを捉え、可視化する方法でもあるため、行為や意識と前提(蒲谷他2019)との関わりを分析、可視化することも可能となるのではないかという見通しが立った。
ISSN:1348-8481
2434-4680
DOI:10.32252/tcg.22.0_214