下口唇正中溝(median lower lip fissure)とその炎症について

下口唇には多数の溝が存在する。その中で正中の溝で最も深く長いものを下口唇正中溝と称したが、およそ 50%のヒトがそれを有していた。その溝は下口唇の左右の運動のアコーディング運動を容易にするためのもので、正中が最も深いのはそこに最大の張力がかかるためと考えた。下口唇粘膜が脆弱となったり強い左右への張力が強くなった場合にそこに亀裂が生じて炎症へと発展する。その炎症例 24 例に細菌検査を施行した。結果、ブドウ球菌が最多で 54.2%であったが、MRSA は全体の 20.8%で決してまれなものでないことが分かった。他の細菌は口内常在菌とみなされるものであったが、その検出率は口角炎のそれよりかなりの低...

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Published in耳鼻と臨床 Vol. 63; no. 3; pp. 81 - 87
Main Authors 岸本, 麻子, 大津, 和弥, 井野, 千代徳, 田辺, 正博, 井野, 素子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 耳鼻と臨床会 20.05.2017
Subjects
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ISSN0447-7227
2185-1034
DOI10.11334/jibi.63.3_81

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Summary:下口唇には多数の溝が存在する。その中で正中の溝で最も深く長いものを下口唇正中溝と称したが、およそ 50%のヒトがそれを有していた。その溝は下口唇の左右の運動のアコーディング運動を容易にするためのもので、正中が最も深いのはそこに最大の張力がかかるためと考えた。下口唇粘膜が脆弱となったり強い左右への張力が強くなった場合にそこに亀裂が生じて炎症へと発展する。その炎症例 24 例に細菌検査を施行した。結果、ブドウ球菌が最多で 54.2%であったが、MRSA は全体の 20.8%で決してまれなものでないことが分かった。他の細菌は口内常在菌とみなされるものであったが、その検出率は口角炎のそれよりかなりの低率であった。また、16.7%で細菌が検出されなかった。口角炎、鼻前庭炎では細菌が検出されなかった例が無かったことに比較してこの事実は下口唇正中溝炎の大きな特徴であると思われた。治療は無菌例も少なくないことより放置でも構わないが 5 人に 1 人が MRSA であることに留意する必要がある。
ISSN:0447-7227
2185-1034
DOI:10.11334/jibi.63.3_81