国境を越えたリハビリテーションの継続における課題について—母国を離れ医療支援を受け母国に帰国した一症例を通して

目的  世界には、低中所得国の貧困層の健康向上を主な目的とするNGOが数多く設立されている。ドイツにあるNGO(以下、A団体)は低中所得国の子どもに対し医療支援を行っている。本研究では、医療支援から8年経過した対象(以下、B氏)へのインタビュー調査を行い、A団体の医療支援の効果とB氏に対する国境を越えた作業療法の関わりについて検討することを目的とした。対象と方法  A団体の医療支援を受けドイツに一時移住(以下、渡独)したウズベキスタン共和国在住のB氏を対象とし、B氏に対するA団体の医療支援について、A団体のカルテから情報を収集した。B氏の帰国後の国際生活機能分類における現在の「心身機能・構造」...

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Published in国際保健医療 Vol. 40; no. 2; pp. 59 - 69
Main Authors 勝田 茜, 小池 伸一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本国際保健医療学会 2025
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ISSN0917-6543
2436-7559
DOI10.11197/jaih.40.59

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Summary:目的  世界には、低中所得国の貧困層の健康向上を主な目的とするNGOが数多く設立されている。ドイツにあるNGO(以下、A団体)は低中所得国の子どもに対し医療支援を行っている。本研究では、医療支援から8年経過した対象(以下、B氏)へのインタビュー調査を行い、A団体の医療支援の効果とB氏に対する国境を越えた作業療法の関わりについて検討することを目的とした。対象と方法  A団体の医療支援を受けドイツに一時移住(以下、渡独)したウズベキスタン共和国在住のB氏を対象とし、B氏に対するA団体の医療支援について、A団体のカルテから情報を収集した。B氏の帰国後の国際生活機能分類における現在の「心身機能・構造」や「活動」、「参加」などの状況を把握することを目的にインタビュー調査を行った。結果   B氏はほぼ全ての四肢で拘縮と短縮が認められ、A団体の医療支援により3度渡独し、計8回の入院を行い治療を受けた。退院後はA団体の施設内で作業療法を受けた。医療支援の結果、B氏の身体機能および活動に変化が得られた。3度目の渡独からの帰国直前には屋内での車椅子移動は自立し、食事動作も環境設定を行えば自立していた。帰国時にはA団体職員が保護者に対しドイツでの医療支援の内容と継続すべきリハビリテーション(以下、リハビリ)について情報提供を行った。インタビュー調査から、現在は大学生とビジネスマンとして生活しており、地域行事への参加もあることが分かった。一方で屋内の移動を含め、日常生活動作は全般に介助を要していた。結論  帰国後に食事動作を含む活動に介助を要することになった要因として、帰国時にB氏の保護者へリハビリに関する内容を含む情報提供が適切に行えていなかったのではないかと考える。国境を越えたリハビリにおいて、対象を含めた関係者のリハビリに対する知識や国境を超える前後での医療環境や社会環境の違いを配慮し、連携する必要があることが示唆された。
ISSN:0917-6543
2436-7559
DOI:10.11197/jaih.40.59