漢方薬による便秘症治療により認知症が改善した1例

便秘症の悪化 (痙攣性便秘) とともに,アルツハイマー病 (Alzheimer disease: AD) の諸症状が急激に悪化した症例に,大建中湯を投与したところ,便秘の回復とともに諸症状の顕著な改善を認めた症例を経験した。近年,認知症の発症,進行には脳腸相関の関与が指摘されている。便秘症により,腸内細菌叢の多様性が障害され,増加した悪玉菌 (有害菌) により,腸管粘膜バリア機能の劣化から,腸管壁透過性の促進を生じ,腸管内の物質 (悪玉菌の代謝産物など) が腸管神経~迷走神経,血液循環,免疫系を介して,脳神経に作用し,認知機能障害を引き起こす可能性が考えられる。本症例の著効要因としては,大建中...

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Published in日本脳神経漢方医学会誌 Vol. 10; no. 1; pp. 71 - 77
Main Authors 玉野 雅裕, 小倉 絹子, 中村 優子, 高橋 元, 岡村 麻子, 加藤 士郎, 大城 信之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経漢方医学会 2025
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ISSN2759-498X
2759-4963
DOI10.57364/kmnn.10.1_71

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Summary:便秘症の悪化 (痙攣性便秘) とともに,アルツハイマー病 (Alzheimer disease: AD) の諸症状が急激に悪化した症例に,大建中湯を投与したところ,便秘の回復とともに諸症状の顕著な改善を認めた症例を経験した。近年,認知症の発症,進行には脳腸相関の関与が指摘されている。便秘症により,腸内細菌叢の多様性が障害され,増加した悪玉菌 (有害菌) により,腸管粘膜バリア機能の劣化から,腸管壁透過性の促進を生じ,腸管内の物質 (悪玉菌の代謝産物など) が腸管神経~迷走神経,血液循環,免疫系を介して,脳神経に作用し,認知機能障害を引き起こす可能性が考えられる。本症例の著効要因としては,大建中湯の便秘改善作用 (腸管運動を的確に調節) と配合生薬;膠飴による腸内細菌叢是正効果により,悪玉菌の代謝産物が減少し,さらに腸壁のバリア機能が正常化し,脳腸相関の悪循環が断ち切られた可能性が考えられる。認知症治療における大建中湯の有用性が示唆された。
ISSN:2759-498X
2759-4963
DOI:10.57364/kmnn.10.1_71