葉面積モデルに基づくダイズ初期生育点数化手法の開発

日本のダイズ栽培においては,湿害による初期生育の抑制が収量低下の要因のひとつに挙げられる.また,農業経営の大規模化が加速しており,広大な面積の圃場に対し数十日かけて播種作業を行うような事例も存在する.広大な面積すべてに対し排水対策のような初期生育改善策を施すことは困難であるため,圃場ごとに優先順位をつけて対策を行うことが望ましい.加えて,生産者圃場においては個体の枯死等により圃場内で栽植密度が変動しうる.よって,生産者圃場における初期生育を改善し,ダイズ生産の安定化を実現するためには,播種日と栽植密度の変異に対応できる初期生育評価手法が必要だと考えられたため,本研究ではその開発を目的とした.品...

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Published in日本作物学会紀事 Vol. 94; no. 3; pp. 199 - 208
Main Authors 近藤 琳太郎, 藤竿 和彦, 宮路 広武
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本作物学会 05.07.2025
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ISSN0011-1848
1349-0990
DOI10.1626/jcs.94.199

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Summary:日本のダイズ栽培においては,湿害による初期生育の抑制が収量低下の要因のひとつに挙げられる.また,農業経営の大規模化が加速しており,広大な面積の圃場に対し数十日かけて播種作業を行うような事例も存在する.広大な面積すべてに対し排水対策のような初期生育改善策を施すことは困難であるため,圃場ごとに優先順位をつけて対策を行うことが望ましい.加えて,生産者圃場においては個体の枯死等により圃場内で栽植密度が変動しうる.よって,生産者圃場における初期生育を改善し,ダイズ生産の安定化を実現するためには,播種日と栽植密度の変異に対応できる初期生育評価手法が必要だと考えられたため,本研究ではその開発を目的とした.品種「リュウホウ」を対象として,播種後40日程度までの葉面積を積算気温で記述する葉面積モデルのパラメーターを,3栽植密度×4回栽培の試験に基づき求めた.このモデルによる算出値を生育の典型とし,別途測定または推定した実際の葉面積との比を取ることで,生育点数を算出できるようにした.また,播種から葉面積モデルの始点までの日数を積算気温から求める式を5回の播種試験から求めた.これらの式を基に,生産者圃場において栽培されたダイズの生育点数を求め,生産者圃場での適用可能性を評価するために収量との関係を2年間にわたって調査した結果,両者の間にr = 0.70(p < 0.01)の相関関係があった.今後は,本研究の手法における他の品種,地域,栽植様式に対する適用可能性を検討しながら,実装範囲を広げていくことが課題になると考えられる.
ISSN:0011-1848
1349-0990
DOI:10.1626/jcs.94.199