Sphingosylphosphorylcholine(SPC)によって引き起こされる血管平滑筋異常収縮に対するノビレチンの抑制作用

血管平滑筋のCa2+依存性収縮とは対照的に,スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)/ Rhoキナーゼ(ROK)経路を介したCa2+非依存性血管収縮は,血管攣縮などの異常な血管過収縮の一因である.血管攣縮を予防するため食品由来成分を中心に探索した結果,柑橘由来成分であるノビレチンを見出した.ノビレチンはSPCによって引き起こされた血管異常収縮を強力に抑制し,40mM K+溶液によって引き起こされたCa2+依存性血管収縮に対しては,微弱な抑制効果を示した.さらに,細胞質Ca2+濃度と張力の同時測定では,ノビレチンは細胞質Ca2+濃度に影響を与えることなくSPCによって引き起こされた血管異常収縮を...

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Published in山口医学 Vol. 70; no. 1; pp. 29 - 35
Main Author 宮成, 健司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 山口大学医学会 04.03.2021
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ISSN0513-1731
1880-4462
DOI10.2342/ymj.70.29

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Summary:血管平滑筋のCa2+依存性収縮とは対照的に,スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)/ Rhoキナーゼ(ROK)経路を介したCa2+非依存性血管収縮は,血管攣縮などの異常な血管過収縮の一因である.血管攣縮を予防するため食品由来成分を中心に探索した結果,柑橘由来成分であるノビレチンを見出した.ノビレチンはSPCによって引き起こされた血管異常収縮を強力に抑制し,40mM K+溶液によって引き起こされたCa2+依存性血管収縮に対しては,微弱な抑制効果を示した.さらに,細胞質Ca2+濃度と張力の同時測定では,ノビレチンは細胞質Ca2+濃度に影響を与えることなくSPCによって引き起こされた血管異常収縮を抑制し,40mM K+溶液によって引き起こされたCa2+依存性血管収縮に対してわずかな抑制効果を及ぼした.これまでに我々は,SPC刺激によるROKの活性化,活性化したROK細胞質から細胞膜への移動,ミオシンホスファターゼ標的サブユニット1(MYPT1)とミオシン軽鎖(MLC)のリン酸化レベルの上昇を明らかにし,ROKの活性化が血管攣縮に重要な役割を果たすことを報告してきたが,本研究において,ノビレチンは,SPC刺激によってもたらされるリン酸化MYPT1およびリン酸化MLCの発現レベルの上昇を有意に著しく抑制することが明らかになった.以上の結果は,ノビレチンが血管攣縮につながる異常な血管収縮に対する新規治療薬の標的候補として有望であることを示唆している.
ISSN:0513-1731
1880-4462
DOI:10.2342/ymj.70.29