非腫瘤形成型病変を呈した脳原発性悪性リンパ腫の1剖検例

73歳, 女性. 主訴は意識障害. 1998年11月末に体のふらつき, 12月初めに傾眠傾向と食欲低下が出現. 12月28日の入院時, 意識障害(JCS II-10)と両下肢のBabinski徴候を認めた. 脳MRIにて両側基底核・橋・大脳脚, 右小脳半球にT2強調画像で非腫瘤状の多発性の高信号域病変を認めた. 脱髄疾患などを考えて投与したステロイドにて一時症状は改善するも, ステロイドの減量とともに悪化し, 1999年3月の脳MRIでは両側前頭葉白質, 脳梁, 左中小脳脚, 左小脳半球にも新たな病変を認めた. ステロイドの増量にても意識レベルはJCS III-200~300となり, 以後改善...

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Published in医療 Vol. 55; no. 6; pp. 291 - 295
Main Authors 宮澤, 幸仁, 栗原, 紀子, 鈴木, 博義
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国立医療学会 20.06.2001
国立医療学会
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ISSN0021-1699
1884-8729
DOI10.11261/iryo1946.55.291

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Summary:73歳, 女性. 主訴は意識障害. 1998年11月末に体のふらつき, 12月初めに傾眠傾向と食欲低下が出現. 12月28日の入院時, 意識障害(JCS II-10)と両下肢のBabinski徴候を認めた. 脳MRIにて両側基底核・橋・大脳脚, 右小脳半球にT2強調画像で非腫瘤状の多発性の高信号域病変を認めた. 脱髄疾患などを考えて投与したステロイドにて一時症状は改善するも, ステロイドの減量とともに悪化し, 1999年3月の脳MRIでは両側前頭葉白質, 脳梁, 左中小脳脚, 左小脳半球にも新たな病変を認めた. ステロイドの増量にても意識レベルはJCS III-200~300となり, 以後改善することはなかった. 1999年5月6日, 脳生検にて悪性リンパ腫と診断され全脳に対する放射線照射を施行するも, さらに病変は拡大し7月11日死亡した. 本症例は剖検にて脳原発性悪性リンパ腫と確診されたが, 脳MRIにおける腫瘤を形成しない多発性の病変の場合は悪性リンパ腫をも考慮した早期の診断の必要性を示唆するものである.
ISSN:0021-1699
1884-8729
DOI:10.11261/iryo1946.55.291