腎細胞癌における血清γ-エノラーゼ値の検討 腫瘍マーカーとしての意義

腎細胞癌における血清γ-エノラーゼの腫瘍マーカーとしての有用性を明らかにするために, 高感度エンザイムイムノアッセイにより, 腎細胞癌患者65例, 健常者100例について血清α-およびγ-エノラーゼを測定し, 総エノラーゼに対するγ-エノラーゼの割合 (γ/α+γ) を算出した. 健常者の血清γ-エノラーゼ値は1.6~5.8ng/mlであり, 平均値±標準偏差 (SD) は3.1±0.9ng/mlであった. 血清γ-エノラーゼの正常上限を平均値+3SDの6ng/mlとすると, 腎細胞癌患者65例のうち40例 (63%) でその上昇がみられた. その平均値 (61例) は8.3±4.6ng/ml...

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Published in日本泌尿器科學會雑誌 Vol. 79; no. 2; pp. 220 - 226
Main Authors 三矢, 英輔, 灰本, 元, 村瀬, 達良, 高士, 宗久, 田中, 純二, 加藤, 兼房
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本泌尿器科学会 1988
The Japanese Urological Association
社団法人日本泌尿器科学会
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ISSN0021-5287
1884-7110
DOI10.5980/jpnjurol1928.79.2_220

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Summary:腎細胞癌における血清γ-エノラーゼの腫瘍マーカーとしての有用性を明らかにするために, 高感度エンザイムイムノアッセイにより, 腎細胞癌患者65例, 健常者100例について血清α-およびγ-エノラーゼを測定し, 総エノラーゼに対するγ-エノラーゼの割合 (γ/α+γ) を算出した. 健常者の血清γ-エノラーゼ値は1.6~5.8ng/mlであり, 平均値±標準偏差 (SD) は3.1±0.9ng/mlであった. 血清γ-エノラーゼの正常上限を平均値+3SDの6ng/mlとすると, 腎細胞癌患者65例のうち40例 (63%) でその上昇がみられた. その平均値 (61例) は8.3±4.6ng/mlで健常者に比べて有意に高かった (p<0.001). 一方, 血清α-エノラーゼ値は腎細胞癌患者で71±55ng/ml, 健常者で67±24ng/mlであった. 腎細胞癌患者のγ/α+γ(13.6%) は健常者 (4.7%) に比べて有意に高かった (p<0.001). 腎細胞癌患者の stage 別血清γ-エノラーゼ陽性率は stage I: 52%, stage II: 50%, stage III: 67%, stage IV: 68%であった. high stage 例 (III+IV) の血清γ-エノラーゼ平均値は low stage 例 (I+II) に比べて有意に高かった (p<0.05). 治癒切除症例23例において血清γ-エノラーゼ値は術後に有意に下降していた (p<0.05). さらに遠隔転移が生じた時点で, 継続的に測定できた6例全例で血清γ-エノラーゼ値の再上昇を認めた. 以上から, 血清γ-エノラーゼ値は腎細胞癌患者の病期診断と臨床経過をみる上で有用なマーカーであることが示された.
ISSN:0021-5287
1884-7110
DOI:10.5980/jpnjurol1928.79.2_220