急性腹膜炎に対する Cefmenoxime の臨床的研究 組織内濃度と臨床効果の検討

種々の原因による急性腹膜炎の患者15例に, β-Lactamase抵抗性を有するCephalosporin系新抗生物質Cefmenoxime (CMX) を治療に用い, 臨床効果を検討した。1回500mg1日2回の筋注を11例に, 1回500~1,000mgの点滴静注1日2回を4例に施行した。臨床効果は著効10例, 有効5例であつた。このうち14例の手術時にCMXの各種組織内濃度を検討した。1,000mg静注後20分の虫垂組織内濃度は45.5μg/gに達していた。虫垂内容の膿汁内濃度も52.5μg/mlを認めた。漿液性の多い腹水, 膿汁では高濃度を示したが, 粘稠濃厚な膿汁では移行は低濃度であ...

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Published inThe Japanese Journal of Antibiotics Vol. 36; no. 6; pp. 1544 - 1552
Main Authors 沢田, 康夫, 橋本, 伊久雄, 阿部, 弘, 三上, 二郎, 中村, 孝, 戸次, 英一, 葛西, 洋一, 中西, 昌美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本感染症医薬品協会 01.06.1983
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ISSN0368-2781
2186-5477
DOI10.11553/antibiotics1968b.36.1544

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Summary:種々の原因による急性腹膜炎の患者15例に, β-Lactamase抵抗性を有するCephalosporin系新抗生物質Cefmenoxime (CMX) を治療に用い, 臨床効果を検討した。1回500mg1日2回の筋注を11例に, 1回500~1,000mgの点滴静注1日2回を4例に施行した。臨床効果は著効10例, 有効5例であつた。このうち14例の手術時にCMXの各種組織内濃度を検討した。1,000mg静注後20分の虫垂組織内濃度は45.5μg/gに達していた。虫垂内容の膿汁内濃度も52.5μg/mlを認めた。漿液性の多い腹水, 膿汁では高濃度を示したが, 粘稠濃厚な膿汁では移行は低濃度であつた。起炎菌は1例はK. pneumoniaeとE. coliの混合感染であり, 1例はE. aerogenesが起炎菌であつたが, 他の11例はE. coliを得た。E. aerogenesはMICが108で12.5μg/ml, 106で1.56μg/mlであつたが, 他の起炎菌のMICは108で0.02~0.2μg/ml, 106では0.012~0.05μg/mlであつた。この数値は術中に測定した炎症組織内のCMX濃度を大幅に下廻つており, 重症例を除く急性腹膜炎では1回500mg, 1日2回の筋注により充分な臨床効果を期待できると言える。又全例に問題とすべき副作用はなく, 臨床検査値の異常も認められなかつた。従つてCMXは急性腹膜炎の治療に極めて有用な薬剤と言える。
ISSN:0368-2781
2186-5477
DOI:10.11553/antibiotics1968b.36.1544