第30回 日本コミュニケーション障害学会学術講演会 教育講演4 語想起障害に対する評価と治療:認知神経心理学の貢献

失語症患者は,ほぼ全員に語想起障害がみられ,それは日常生活において大きな障害となっている.失語症患者の言語療法に携わるセラピストは,語想起障害に効果的なセラピーについて非常に関心をもっているものである.語想起障害の性質についてどう理解したらよいか,更に,どのようなセラピーを行えばよいかについて,過去20年間においてみられた進歩は,認知神経心理学によってもたらされた.この論文においては,まず,語想起障害の根底にある障害の性質を見極めるために,(i)成績に影響を及ぼす変数,(ii)さまざまな課題における成績,(iii)産生の誤りの性質,の3種類の情報を総合しながら,認知神経心理学をいかに活用するこ...

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Published inコミュニケーション障害学 Vol. 22; no. 1; pp. 18 - 29
Main Author 藤林, 眞理子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本コミュニケーション障害学会 30.04.2005
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ISSN1347-8451
1884-7048
DOI10.11219/jjcomdis2003.22.18

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Summary:失語症患者は,ほぼ全員に語想起障害がみられ,それは日常生活において大きな障害となっている.失語症患者の言語療法に携わるセラピストは,語想起障害に効果的なセラピーについて非常に関心をもっているものである.語想起障害の性質についてどう理解したらよいか,更に,どのようなセラピーを行えばよいかについて,過去20年間においてみられた進歩は,認知神経心理学によってもたらされた.この論文においては,まず,語想起障害の根底にある障害の性質を見極めるために,(i)成績に影響を及ぼす変数,(ii)さまざまな課題における成績,(iii)産生の誤りの性質,の3種類の情報を総合しながら,認知神経心理学をいかに活用することができるかについて述べる.そのような評価の結果から,障害された能力と,障害せずに残っている処理能力についての情報が得られる.次に,語想起障害に対するいくつかの異なったセラピーの方法について考察を加える.「意味的な」セラピーと「語彙的/音韻的な」セラピーを含むさまざまなセラピーの方法論は,どれも,意味から語形へのマッピングを強化するという形で作用し,また,項目限定的な効果である.それに対して,単語の音声産出を促進する目的で,音韻的配列を改善するセラピーや障害程度の少ない書字能力を活用するようなセラピーは,セラピーにおいて取り上げなかった項目にも汎化する効果がある.
ISSN:1347-8451
1884-7048
DOI:10.11219/jjcomdis2003.22.18