長期に亘る叢林生活を送つた1例の内科的記録

この報告は第2次世界大戦中およびその後28年間に亘り異常環境下に孤独な叢林生活を送つた元日本軍人の医学的記録である.グアム島における食生活は質的には不完全ながらバランスが保たれていた様に思われるが,量的にはかなりの欠乏状態にあつたと思われる.入院時の検査成績では軽度低蛋白血症,ビタミンB1および葉酸の低下,大赤血球性貧血,リノール酸の低下,尿中17-OHCSおよび基礎代謝率の低下を認め,臨床上は皮下脂肪の減少,筋肉の萎縮,皮膚のペラグラ様変化, subclinical neuropathyの所見,低血圧,徐脈傾向等の所見を認めたが,経過中比較的早期に回復をみた.尿中17-OHCS基礎代謝率の低...

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Published in日本内科学会雑誌 Vol. 63; no. 6; pp. 572 - 578
Main Authors 下条, ゑみ, 河野, 実, 富沢, 孝之, 三上, 次郎, 小西, 建吉, 越島, 新三郎, 日野, 佳弘, 藤岡, 成徳, 岸本, 道太, 渋谷, 敏三, 小山, 善之, 片桐, 秀昭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内科学会 1974
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ISSN0021-5384
1883-2083
DOI10.2169/naika.63.572

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Summary:この報告は第2次世界大戦中およびその後28年間に亘り異常環境下に孤独な叢林生活を送つた元日本軍人の医学的記録である.グアム島における食生活は質的には不完全ながらバランスが保たれていた様に思われるが,量的にはかなりの欠乏状態にあつたと思われる.入院時の検査成績では軽度低蛋白血症,ビタミンB1および葉酸の低下,大赤血球性貧血,リノール酸の低下,尿中17-OHCSおよび基礎代謝率の低下を認め,臨床上は皮下脂肪の減少,筋肉の萎縮,皮膚のペラグラ様変化, subclinical neuropathyの所見,低血圧,徐脈傾向等の所見を認めたが,経過中比較的早期に回復をみた.尿中17-OHCS基礎代謝率の低下はなお持続した.要するに本症例は異常環境下に代謝の最小状態で生命の維持に適応すると共に,それにふさわしい最小限の身体活動と栄養補給が行なわれて来た結果著しい栄養障害を来たさずに長期間生存し得た貴重な症例であり,基礎代謝の低下が持続していることはその適応現象からの回復が遅くれているためと思われる.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.63.572