専門チームが実践するリスクマネジメント NST薬剤師からみた静脈栄養の問題点

静脈栄養を用いた栄養管理では、処方内容が病態に適合していない場合、そのリスクは経管栄養に比べて格段に増大する。われわれは、グルコースの過剰投与によって重篤な低リン血症を呈した慢性腎不全症例を経験した。当院においてハイカリックRF (R) を用いて施行された静脈栄養の栄養組成を調査したところ、アミノ酸投与量が不足していた。また、脂肪乳剤が併用されていないことが多く、その結果熱量はグルコースに偏重する傾向が認められた。このようにインバランスな静脈栄養が行われる原因の一つとして、至適栄養投与量は個々の症例や病態によって異なるにも拘わらず、輸液製剤に画一的な用法・用量が設定されていることが考えられた。...

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Published in日本医療マネジメント学会雑誌 Vol. 9; no. 2; pp. 332 - 337
Main Author 東, 敬一朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会 01.09.2008
日本医療マネジメント学会
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ISSN1881-2503
1884-6807
DOI10.11191/jhm2006.9.332

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Summary:静脈栄養を用いた栄養管理では、処方内容が病態に適合していない場合、そのリスクは経管栄養に比べて格段に増大する。われわれは、グルコースの過剰投与によって重篤な低リン血症を呈した慢性腎不全症例を経験した。当院においてハイカリックRF (R) を用いて施行された静脈栄養の栄養組成を調査したところ、アミノ酸投与量が不足していた。また、脂肪乳剤が併用されていないことが多く、その結果熱量はグルコースに偏重する傾向が認められた。このようにインバランスな静脈栄養が行われる原因の一つとして、至適栄養投与量は個々の症例や病態によって異なるにも拘わらず、輸液製剤に画一的な用法・用量が設定されていることが考えられた。そこで重要となるのは、栄養の専門知識を有したNST薬剤師による適切な情報の提供と静脈栄養の実践である。これは、静脈栄養に付随するリスクマネジメントに直結すると思われる。NSTは栄養の専門知識を有したスタッフの集まりである。NSTが栄養管理を行うことは輸液製剤の適正使用につながり、患者のみならず病院経営面においても有益な結果をもたらすと考えられる。
ISSN:1881-2503
1884-6807
DOI:10.11191/jhm2006.9.332