夫を亡くした妻の喪失体験の意味づけ 夫婦としての存在の意味づけ

本研究では夫を亡くした妻の語りから,喪失体験の意味づけの内容と意味づけに至るプロセスについて検討するため,62~74歳の5名に半構成面接を実施した。その結果,喪失体験の意味づけは,<夫は空気のような安心感><夫婦一体感><夫婦二人の世界><パートナーとしての夫婦>であり,通底は“夫婦としての存在”であった。これらの意味づけは,妻が実在のない夫と夫婦としての存在を再構築した形であり,それぞれの相違は,夫婦としての存在を形成する円の中で個としての夫と妻のバランスの相違として説明できる。また,喪失体験のプロセスは,夫の実在がないことで死を認め,夫婦としての存在が明らかになると同時に,それを失うことの...

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Published in日本看護研究学会雑誌 Vol. 28; no. 5; pp. 5_71 - 5_79
Main Author 小林, 裕子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本看護研究学会 01.12.2005
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ISSN2188-3599
2189-6100
DOI10.15065/jjsnr.20050830006

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Summary:本研究では夫を亡くした妻の語りから,喪失体験の意味づけの内容と意味づけに至るプロセスについて検討するため,62~74歳の5名に半構成面接を実施した。その結果,喪失体験の意味づけは,<夫は空気のような安心感><夫婦一体感><夫婦二人の世界><パートナーとしての夫婦>であり,通底は“夫婦としての存在”であった。これらの意味づけは,妻が実在のない夫と夫婦としての存在を再構築した形であり,それぞれの相違は,夫婦としての存在を形成する円の中で個としての夫と妻のバランスの相違として説明できる。また,喪失体験のプロセスは,夫の実在がないことで死を認め,夫婦としての存在が明らかになると同時に,それを失うことの気づきへの認識から始まる。夫と死別した現実に直面し心理的安定が崩れることから,死後の夫とのつながりを“夫婦としての存在”の形として再構築し,心理的安定を獲得することに向かう過程として説明できる。
ISSN:2188-3599
2189-6100
DOI:10.15065/jjsnr.20050830006